フレックスタイム制とは?メリット・デメリット完全解説

フレックスタイム制とは?メリット・デメリット完全解説

働き方改革が進む現代社会において、フレックスタイム制は多くの企業や労働者から注目されている柔軟な勤務形態です。
この制度は労働者に時間の自由度を与えながらも、企業の生産性向上にも寄与する可能性を秘めています。
一方で、適切な導入と運用がなければ、メリットを十分に引き出せない側面もあります。

本記事では、フレックスタイム制の基本概念から、労働者側と企業側それぞれのメリット・デメリット、他の働き方との比較など幅広く解説していきます。
これから制度導入を検討している企業の担当者や、フレックスタイム制で働くことを考えている方は、ぜひこの記事の内容を参考に、自分自身や組織にとって最適な働き方を検討する際にお役立てください。

目次

フレックスタイム制の基本概念とは

フレックスタイム制は、働き方改革の一環として注目されている勤務形態です。
この制度の基本的な考え方や仕組みを理解することで、企業と労働者双方にとってのメリットを最大化できます。
まずは、フレックスタイム制の本質から詳しく見ていきましょう。

フレックスタイム制の定義と仕組み

フレックスタイム制とは、一定期間(清算期間)における総労働時間を定めた上で、労働者が日々の始業・終業時刻を自ら決定できる制度です。
この制度では、労働者は所定の労働時間を確保しつつも、日々の勤務時間を柔軟に調整することができます。
1日8時間という固定的な労働時間の概念から脱却し、効率的な働き方を実現するための仕組みといえます。

労働基準法第32条の3に基づいて実施される本制度では、労使協定によって具体的な運用ルールを定めることが必要です。
フレックスタイム制を導入するためには、労使協定において「対象となる労働者の範囲」「清算期間」「清算期間における総労働時間」「標準となる1日の労働時間」などを明確に定める必要があります。
現在の労働基準法では、清算期間は最長3ヶ月まで設定可能となっています。

  • 所定の総労働時間を定めた上で、労働者が始業・終業時刻を自己決定できる
  • 労使協定の締結が必須で、就業規則への記載も必要
  • 労働者の自律性を尊重しながら、業務効率の向上を図る制度

コアタイムと清算期間の概念

フレックスタイム制を構成する重要な要素として、「コアタイム」と「清算期間」があります。
コアタイムとは、全従業員が必ず勤務しなければならない時間帯のことで、例えば「10:00〜15:00」などと設定されます。
このコアタイムを設けることで、社内のコミュニケーションや会議の円滑な実施を確保することができます。

一方、コアタイム以外の時間帯は「フレキシブルタイム」と呼ばれ、労働者が自由に勤務時間を選択できます。
なお、コアタイムを設定せず、すべての時間をフレキシブルタイムとする「完全フレックスタイム制」を採用する企業も増えています。
近年のトレンドとしては、リモートワークの普及に伴い、コアタイムを短縮または廃止する企業が増加傾向にあります

清算期間とは、労働時間を集計・清算する期間のことで、1ヶ月単位が一般的ですが、現在の労働基準法では最長3ヶ月まで設定可能です。
この期間内で総労働時間を満たせば良いため、繁忙期と閑散期のバランスを取りながら働くことができます。
例えば1ヶ月の清算期間で160時間の所定労働時間がある場合、その期間内で合計160時間働けば良く、日によって労働時間に長短があっても問題ありません。

コアタイムありコアタイムなし
特徴全従業員が必ず出社する時間帯があり、コミュニケーションが取りやすい完全に自由な時間設定が可能で、より高い柔軟性を実現
適した業種・状況チームワークが重要な業務、定期的な会議や打ち合わせが必要な部署成果物で評価される業務、個人作業が中心の職種、リモートワーク中心の環境

法律上の位置づけと必要な手続き

フレックスタイム制は労働基準法第32条の3に規定されており、法的にも認められた勤務形態です。
この制度を導入するには、労使協定の締結と所轄の労働基準監督署への届出が必要となります。
また、就業規則にもフレックスタイム制に関する規定を明記しなければなりません。

労使協定で定めるべき主な事項は以下の通りです。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 清算期間(1ヶ月以内、または1〜3ヶ月)
  3. 清算期間における総労働時間
  4. 標準となる1日の労働時間
  5. コアタイムを定める場合はその時間帯
  6. フレキシブルタイムを定める場合はその時間帯

また、清算期間が1ヶ月を超える場合には、1ヶ月ごとの労働時間の上限も定める必要があります。
これは過重労働を防止するための措置で、例えば3ヶ月の清算期間を設ける場合、3ヶ月トータルの総労働時間だけでなく、各月の労働時間上限も設定しなければなりません。
さらに、月をまたいだ清算期間を設ける場合は、割増賃金の取り扱いにも注意が必要です。

  1. 労使協定の締結(書面による)
  2. 就業規則への明記と変更
  3. 労働基準監督署への届出
  4. 対象労働者への説明と周知
  5. 適切な労働時間管理システムの整備

フレックスタイム制のメリットとデメリット

フレックスタイム制には、労働者と企業の双方にとって様々なメリットとデメリットが存在します。
制度の導入を検討する際は、これらを総合的に判断することが重要です。
それぞれの立場から見た利点と課題を詳しく見ていきましょう。

労働者側から見たメリット

フレックスタイム制は、労働者にとって多くのメリットがあります。
最大の利点は、自分のライフスタイルや体調に合わせて働く時間を調整できることです。
例えば、子育て中の親は学校行事に参加しやすくなり、また朝型の人は早朝から集中して仕事に取り組むことができます。

通勤ラッシュを避けられることも大きなメリットです。
混雑時間をずらすことで、ストレスなく通勤できるだけでなく、通勤時間の短縮にもつながります。

  • ワークライフバランスの向上(家庭や趣味との両立がしやすい)
  • 自分の生産性が高い時間帯に集中して働ける
  • 通勤ラッシュを回避できる
  • 急な私用にも対応しやすい
  • 自己管理能力の向上

労働者側から見たデメリット

一方で、フレックスタイム制には労働者にとっての課題も存在します。
最も大きな課題は自己管理の必要性です。
勤務時間を自分で決める自由がある分、労働時間の管理や業務の計画を自己責任で行わなければなりません。

また、コミュニケーション上の問題も生じる可能性があります。
勤務時間がずれることで、同僚や上司とのコミュニケーションがとりにくくなることがあります。
特に緊急の相談事がある場合、関係者が不在で対応が遅れるケースも考えられます。

さらに、フレックスタイム制が却って長時間労働を助長する可能性もあります。
仕事とプライベートの境界が曖昧になり、「いつでも働ける」という考えから、結果的に労働時間が増えてしまうケースがあります。

  1. 自己管理能力が求められる(時間管理が苦手な人には負担)
  2. 同僚や上司とのコミュニケーションが取りにくくなる可能性
  3. 仕事とプライベートの境界が曖昧になるリスク
  4. 「いつでも働ける」という意識から、かえって長時間労働になる危険性
  5. 評価の公平性への不安(出社時間が遅い=怠けているという誤解)

企業側から見たメリット

企業にとってもフレックスタイム制の導入には多くのメリットがあります。
まず、優秀な人材の確保・定着率の向上が挙げられます。
労働者が自分のライフスタイルに合わせて働ける環境を提供することで、特に育児や介護に携わる従業員の離職を防ぐことができます。

また、従業員の生産性向上も期待できます。
個人が最も集中できる時間帯に仕事をすることで、効率的な業務遂行が可能になります。

オフィススペースの効率的な活用も可能です。
出社時間がばらけることで、ピーク時の混雑が緩和され、会議室やデスクなどの共有リソースを効率的に使用できます。
特にコロナ禍以降はオフィスの分散利用が重要視されており、フレックスタイム制はその実現に貢献します。

  • 優秀な人材の確保・定着(働き方の選択肢を提供することで採用市場での競争力向上)
  • 従業員の生産性・モチベーション向上
  • オフィススペースの効率的活用
  • 繁閑の差がある業務への柔軟な対応
  • 残業時間の削減と人件費の最適化

企業側から見たデメリット

企業側にとっての課題も存在します。
最も大きな課題は勤怠管理の複雑化です。
個々の従業員が異なる時間帯に働く場合、労働時間の正確な把握と管理が難しくなります。

また、コミュニケーションやチームワークの低下も懸念されます。
従業員の勤務時間がバラバラになることで、チーム全体での会議調整や情報共有が難しくなる可能性があります。
特にプロジェクト単位で動く業務では、メンバー全員が揃わないことによる進捗の遅れが生じることもあります。

運用コストの増加も考慮すべき点です。
適切な勤怠管理システムの導入や、長時間のオフィス開放に伴う光熱費・人件費の増加が発生する可能性があります。

労働者側企業側
メリットワークライフバランスの向上、通勤ラッシュ回避、生産性の高い時間帯での勤務人材確保・定着率向上、生産性向上、オフィス効率化、残業削減
デメリット自己管理の負担、コミュニケーション不足、境界の曖昧さ、長時間労働のリスク勤怠管理の複雑化、チームワーク低下、管理コスト増加、公平な評価の難しさ

他の働き方とフレックスタイム制の比較

フレックスタイム制は多くの柔軟な働き方の一つですが、他の制度とは明確な違いがあります。
それぞれの特徴を理解することで、自社や自分自身に最適な働き方を選択する手助けになります。
主要な働き方制度との違いを見ていきましょう。

裁量労働制との違い

裁量労働制とフレックスタイム制は、どちらも柔軟な働き方を実現する制度ですが、根本的な考え方が異なります。
フレックスタイム制は労働時間を柔軟に設定できる制度ですが、実際に働いた時間に応じて賃金が支払われます。
一方、裁量労働制は実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があり、対象となる業務が限定されています。
専門業務型は研究開発や情報システムの分析・設計などの専門性の高い業務、企画業務型は本社などの中枢部門で企画・立案・調査・分析を行う業務が対象です。

フレックスタイム制裁量労働制
労働時間の扱い
実際の労働時間を計測・集計みなし労働時間制(実労働時間にかかわらず一定時間働いたとみなす)
対象業務・職種基本的に制限なし法律で定められた特定の業務のみ(専門職、企画業務など)

時差出勤との違い

時差出勤とフレックスタイム制は混同されやすいですが、大きな違いがあります。
時差出勤は、会社が定めた複数の始業・終業時間パターンの中から、従業員が選択する制度です。
例えば「8:00-17:00」「9:00-18:00」「10:00-19:00」といった具合に、会社が提示した固定のシフトから選ぶ形になります。

これに対しフレックスタイム制では、労働者がより自由に始業・終業時間を決定できます。
時差出勤では毎日の労働時間は固定(通常8時間)されていますが、フレックスタイム制では日によって労働時間を変動させることが可能です。
時差出勤は導入が比較的容易なため、フレックスタイム制への移行前のステップとして取り入れる企業も多くあります。

  • 時差出勤:会社が定めた複数の勤務時間帯から選択(例:8-17時、9-18時、10-19時)
  • フレックスタイム制:より自由度が高く、始業・終業時刻を従業員が決定できる
  • 時差出勤では1日の労働時間は固定だが、フレックスタイム制では日ごとに変動可能
  • 時差出勤は制度設計や運用が比較的シンプル

変形労働時間制との違い

変形労働時間制は、繁忙期と閑散期で労働時間に変化がある業種向けの制度です。
1ヶ月、1年などの一定期間を平均して法定労働時間(週40時間)以内になるよう労働時間を配分する仕組みで、会社側が労働時間を決定します。
例えば、小売業では年末年始やセール期間など繁忙期に長時間勤務し、閑散期に短時間勤務とすることで調整します。

対してフレックスタイム制では、総労働時間の枠内で労働者自身が始業・終業時刻を決定できます。
変形労働時間制では会社が労働日や労働時間を事前に決定・通知するのに対し、フレックスタイム制では労働者に選択権があるという点が大きく異なります。

フレックスタイム制変形労働時間制
労働時間の決定者労働者自身が決定会社が事前に決定・通知
主な導入目的労働者の働き方の自由度を高める繁忙期と閑散期で労働時間を効率的に配分する

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まとめ

フレックスタイム制は、労働者に時間の自由度を与えることで、ワークライフバランスの向上や生産性の向上を実現できる柔軟な勤務形態です。
しかし、その効果を最大化するためには、適切な制度設計と運用が不可欠です。

労働者側には自己管理能力が求められる一方、企業側には勤怠管理の仕組みやコミュニケーション環境の整備が必要となります。
また、フレックスタイム制と似た制度である裁量労働制や時差出勤との違いを理解し、自社や自分自身に最適な選択をすることも重要です。

フレックスタイム制は単なる制度ではなく、働き方に対する考え方やマネジメントスタイルの変革も伴います。
本記事を参考に、自分や組織にとって最適な働き方を検討する一歩を踏み出してみてください。

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この記事を書いた人

アイピアジョブ 編集部

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