エネルギー管理士は、省エネルギー社会の実現に不可欠な国家資格として注目を集めています。
この資格は、企業のエネルギー管理や環境対策の実務を担う専門家であることを示すものです。
本記事では、エネルギー管理士の概要から試験制度、合格率、さらには資格取得後のキャリアパスまで網羅的に解説します。
SDGsへの取り組みが企業価値に直結する現代において、エネルギー管理士の需要は高まる一方です。
資格取得を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
エネルギー管理士の概要と重要性
エネルギー管理士は、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)に基づいて定められた国家資格です。
企業活動におけるエネルギー消費の効率化と環境負荷の低減が求められる現代において、エネルギー管理士の役割はますます重要性を増しています。
まずは、この資格の基本的な位置づけと社会的意義について解説していきます。
エネルギー管理士の役割と業務内容
エネルギー管理士は、工場やビルなどの事業所におけるエネルギー使用の合理化を推進する専門家です。
大規模な工場やビルでは、省エネ法によりエネルギー管理士の選任が義務付けられており、企業のエネルギー管理体制の中核を担っています。
具体的には、エネルギー使用状況の分析や省エネ計画の立案、設備の運用改善などを行います。
主な業務内容としては、エネルギー消費設備の運用管理や効率改善、エネルギー使用量の測定・記録、省エネルギー対策の立案と実施などが挙げられます。
さらに、省エネ法に基づく定期報告書や中長期計画書の作成も重要な責務です。
エネルギー管理士は単なる管理者ではなく、企業の省エネ戦略を牽引するリーダー的存在といえるでしょう。
また、カーボンニュートラルへの世界的な動きを受けて、エネルギー管理士には再生可能エネルギーの活用や二酸化炭素排出量の削減策の提案など、より広範な知識と実務能力が求められるようになっています。
企業のサステナビリティ戦略において、エネルギー管理士は中心的な役割を果たすことが期待されているのです。
エネルギー管理士の需要と将来性
エネルギー管理士の需要は、国内外の環境政策の強化に伴い着実に高まっています。
2020年に日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて、企業の省エネ・脱炭素への取り組みは加速しています。
このような背景から、エネルギー管理の専門家としての地位はより重要になっています。
特に注目すべきは、省エネ法の改正により、これまで対象外だった中小規模の事業所にもエネルギー管理の義務が段階的に拡大されていることです。
これにより、エネルギー管理士の活躍の場は従来の大規模工場やビルから、より広範な事業所へと広がっています。
SDGsへの取り組みが企業評価の重要指標となる中、エネルギー管理士の専門性は企業の競争力強化に直結するものとなっています。
将来的には、IoTやAIを活用したスマートエネルギーマネジメントの分野でも、エネルギー管理士の知見が求められるでしょう。
デジタル技術を駆使した効率的なエネルギー管理や、ビッグデータ分析に基づく省エネ戦略の立案など、新たなスキルセットを身につけることで、キャリアの可能性はさらに広がります。
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エネルギー管理士試験の概要と受験資格
エネルギー管理士の資格を取得するためには、国家試験に合格する必要があります。
この試験は、一般財団法人省エネルギーセンターが実施しており、毎年多くの受験者が挑戦しています。
ここでは、試験の基本情報や受験資格、試験内容について詳しく解説します。
試験日程と申込方法
エネルギー管理士試験は、例年4〜6月に申込受付、8月に筆記試験が実施されます。
2025年度の試験は、8月3日(日)に予定されています。
申込方法は、インターネットでの電子申請と書面による郵送申請の2種類があります。
電子申請の場合、一般財団法人省エネルギーセンターの公式ウェブサイトから手続きを行います。
申込期間は例年4月から6月までと限られているため、受験を検討している方は早めに情報を確認することをおすすめします。
受験手数料は、一般受験者の場合17,000円(非課税)となっています。
科目の免除をうけ、課目Ⅰを受験する場合は10,000円です。
なお、試験の会場は全国主要都市に設けられますが、地域によっては会場数が限られる場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
エネルギー管理士の受験資格と要件
エネルギー管理士試験には特に受験資格はなく、誰でも受けることができます。
ただし、免状申請を行うには資格取得前または後に1年以上の実務経験が必要とされているので注意しましょう。
また、後述する研修の受講での資格取得を目指す場合、3年以上の実務経験が必要となります。
なお、ここでの「実務経験」とは、エネルギー関連の仕事ならどのような仕事でも良いわけではなく、熱または電気の管理に関する実務経験が求められます。
具体的には、ボイラーや空調設備の運転管理、電力設備の保守点検、エネルギー使用量の分析などが該当します。
試験の形式と出題範囲
エネルギー管理士試験は、マークシート方式の筆記試験で行われます。
筆記試験は、「必須基礎区分(エネルギー総合管理及び法規)」である課目Ⅰと「専門区分(熱分野または電気分野)」である課目II〜Ⅳの4課目からなります。
試験課目と試験時間は以下の通りです。
熱分野 | 電気分野 | |
---|---|---|
課目Ⅰ | エネルギー総合管理及び法規(共通) 80分 | エネルギー総合管理及び法規(共通) 80分 |
課目Ⅱ | 熱と流体の流れの基礎 110分 | 電気の基礎 80分 |
課目Ⅲ | 燃料と燃焼 80分 | 電気設備及び機器 110分 |
課目Ⅳ | 熱利用設備及びその管理 110分 | 電気応用 110分 |
出題形式は、選択問題と計算問題の組み合わせとなっています。
記述式問題では、実務に即した応用力や分析力が問われ、省エネ対策の提案や設備改善の考察などが求められます。
合格の基準はそれぞれの課目で60%以上正答することです。
全課目の平均が60%ではないため、注意しましょう。仮に一部の科目のみ60%に達していた場合、その課目は以降3年間受験免除となります。
エネルギー管理士試験の合格基準と効果的な勉強方法
エネルギー管理士試験は、専門的な知識と実務経験を問う国家試験として知られています。
効果的な試験対策を立てる上で合格率や難易度について理解することは不可欠です。
ここでは、過去の試験データを分析し、熱分野と電気分野の難易度比較や年度別の傾向、そして効果的な学習方法について解説します。
合格率と難易度
エネルギー管理士試験の合格率は熱分野でも電気分野を選んでも大差なく、例年で30%台で推移しています。
参考までに、2024年度は36.8%、2023年度は37.8%、2022年度は33.9%であり、難易度の高い資格ということができるでしょう。
合格率があまり高くない理由としては、内容の専門性と試験範囲の広さが挙げられるでしょう。
法規の暗記から高度な計算問題まで幅広い能力が求められ、これらを全て体系的に理解する必要があります。
また、全体の平均ではなく、それぞれの課目で60%以上をとる必要があるため、バランスのとれた勉強が必要となります。
効果的な学習方法と対策ポイント
エネルギー管理士試験に合格するためには、計画的かつ効率的な学習が不可欠です。
試験は広範囲の知識を問うため、優先順位をつけた学習が重要となります。
以下に、効果的な学習方法と対策ポイントを紹介します。
まず、過去問題の分析から始めることが推奨されます。
過去5年分程度の問題を解き、出題傾向や自分の弱点を把握することで、効率的な学習計画を立てられます。
特に頻出分野や配点の高い問題を優先的に学習することで、限られた時間内で最大の効果を得ることができます。
学習教材としては、公式テキストである「エネルギー管理士試験 受験の手引き」を基本としつつ、市販の問題集や専門書で補完するとよいでしょう。
また、オンライン講座や通信教育も効果的な選択肢です。
特に実務経験が浅い受験者は、理論だけでなく実践的な知識を習得するために、これらの教材を活用することをおすすめします。
- 基礎理論の確実な理解(熱力学・電気理論など)
- 計算問題の反復練習
- 法規制の最新動向のチェック
- エネルギー統計や分析手法の習得
- 記述式問題の回答テクニックの習得
計算問題は得点源となる一方で、多くの受験者が苦手とする分野です。
日頃から公式を使いこなせるよう練習し、計算速度を上げることが重要です。
記述式問題では、単なる知識の羅列ではなく、論理的な思考と実務に即した提案力が求められます。
研修によるエネルギー管理士資格取得の方法
エネルギー管理士の資格は、国家試験に加えて、所定の研修を受け、修了試験に合格することでも取得可能です。
特に、日常的にエネルギー管理に携わっている方にとっては、業務と関連付けながら学べる点で効率的です。企業からの推薦や支援も得やすく、キャリアのステップアップにもつながることから、広く活用されています。
講習での取得要件
講習を通じてエネルギー管理士を取得するには、最低3年以上の実務経験が求められます。
ここでいう実務経験とは、エネルギーの使用状況の監視や改善、効率化に携わる業務を指します。
勤務証明書や企業推薦などの書類提出が必要となり、条件を満たしていないと、講習の申し込みが受け付けられない場合もあります。
自身が該当するか不安な場合は、主催機関に問い合わせて、事前の確認をしておきましょう。
講習内容と修了試験
講習は、一般財団法人省エネルギーセンターなどが主催し、通常7日間にわたって実施されます。
試験での資格取得同様、全員受けなければならない必須基礎区分の他に分野専門区分があり、熱分野または電気分野のどちらか一方を選択することができます。
近年ではオンラインの研修も行っているので、まとまった時間をとるのが難しい人は確認してみてください。
修了試験は研修最終日に行われ、講義内容をもとにした筆記形式の試験が課されます。
試験問題は講習中の講義から出題されるため、受講内容をしっかり理解していれば合格は十分に可能です。
とはいえ、難しい試験であることに変わりはないため、不安な方は事前に準備しておきましょう。
合格者にはエネルギー管理士の資格が付与され、業務上の法的要件を満たすことができます。
講習ルートの合格率
講習によるエネルギー管理士資格取得の合格率は、一般的に60%前後と試験での資格取得に比べると高水準です。
これは、講義内容と試験が密接に関連しており、受講態度が直接結果に反映されるためです。
また、受講者の多くが現場での経験を有しており、学んだ内容を実務に照らし合わせて理解しやすいことも、合格率を押し上げている要因です。
ただし、短期間で多くの内容を吸収しなければならないため、集中力と時間管理能力も問われます。
講習中は業務を離れるケースが多く、事前にスケジュールを確保しておくことが求められます。
講習取得のメリット
講習ルート最大のメリットは、実務と直結した内容で学習できる点にあります。
座学と演習のバランスが取れており、現場での知識を活かしやすい構成です。
また、筆記試験に苦手意識がある方でも、講義にしっかり参加すれば合格を目指しやすいという利点があります。
自己学習が難しい場合にも、指導者から直接教わる環境が整っています。
さらに、企業が講習費用や出張費を負担してくれるケースも多く、会社と連携して計画的に取得することが現実的です。
制度を理解し、積極的に活用する姿勢が大切です。
エネルギー管理士資格取得のメリットとキャリアパス
エネルギー管理士の資格を取得することは、単に法定資格を持つということにとどまらず、さまざまな面でキャリアにプラスとなります。
ここでは、資格取得によってもたらされる具体的なメリットや、キャリアパスの可能性について詳しく解説します。
エネルギー管理士を目指す方の将来展望をより明確にするための情報を提供します。
資格取得による収入・待遇面への影響
エネルギー管理士の資格取得は、収入面でも大きなメリットをもたらします。
人材紹介会社のデータによると、エネルギー管理士資格を持つ技術者の平均年収は、同等のキャリアを持つ一般技術者と比較して約15〜20%高い傾向にあります。
特に経験年数が増えるにつれて、その差は拡大する傾向が見られます。
具体的な数字では、エネルギー管理士の平均年収は600〜800万円程度で、大手企業や専門コンサルティング会社では1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
特に注目すべきは、資格取得後に転職した場合の年収アップ率が高い点です。
これは、企業がエネルギー管理士の専門性に高い価値を見出していることを示しています。
待遇面では、資格手当が支給される企業が多く、月額1万円〜3万円程度の手当が一般的です。
また、エネルギー管理士としての業務に専念できるよう、特定の部署への配属や業務負担の調整など、勤務環境の面でも配慮される傾向があります。
さらに、社内での発言力や評価も高まり、昇進・昇格のスピードが加速するケースも少なくありません。
エネルギー管理士の転職市場と求人状況
エネルギー管理士の求人市場は、近年特に活況を呈しています。
カーボンニュートラルへの取り組みが企業価値に直結する時代となり、専門知識を持つエネルギー管理士への需要は継続的に高まっています。
業種別に見ると、製造業や電力・ガスなどのエネルギー関連企業に加え、不動産・建設業界でも需要が拡大しています。
特に注目すべきは、従来あまり見られなかった業種からの求人増加です。
データセンターやIT企業、物流業界など、エネルギー消費が経営課題となっている企業が積極的に採用を行っています。
また、雇用形態も多様化しており、正社員としての採用だけでなく、専門コンサルタントとしての業務委託や、複数の企業のエネルギー管理を担当する「シェアード型」の働き方も増えています。
特に中小企業では、専任のエネルギー管理士を雇用するコストを抑えるため、外部専門家への委託ニーズが高まっており、独立・起業の選択肢も広がっています。
関連資格との比較とステップアップ
エネルギー管理士は、エネルギー・環境分野における最も重要な資格の一つですが、キャリアの幅を広げるために他の関連資格も視野に入れることが有効です。
ここでは、関連資格との比較やキャリアステップアップの道筋について考えてみましょう。
複数の資格を組み合わせることで、より専門性の高い人材として評価されることが期待できます。
まず比較対象となるのは、「エネルギー管理員」です。
こちらはエネルギー管理士よりも取得のハードルが低く、講習の受講と修了試験の合格で認定されます。
より上位のステップアップとしては、「技術士(エネルギー部門)」があります。
技術士は日本の技術系資格の最高峰とされ、取得難易度は非常に高いものの、コンサルティング業務の独占資格としての地位を持ちます。
エネルギー管理士としての経験を積んだ後、技術士にチャレンジすることで、さらなるキャリアの飛躍が期待できます。
また、環境分野へのキャリア拡大を考えるなら、「環境計量士」や「公害防止管理者」などの資格も有効です。
これらの資格を組み合わせることで、エネルギーと環境の両面から企業の持続可能性を支える専門家として、さらなる活躍の場が広がります。
特に近年は、ESG経営の観点から、エネルギーと環境の両方に精通した人材への需要が高まっています。
取得難易度 | 主な活躍分野 | |
---|---|---|
エネルギー管理員 | 低〜中 | 工場・ビルの省エネ実務 |
エネルギー管理士 | 中〜高 | 企業の省エネ戦略立案・実行 |
技術士(エネルギー部門) | 非常に高 | 高度なコンサルティング業務 |
環境計量士 | 中 | 環境計測・分析業務 |
キャリアステップアップの観点では、エネルギー管理士としての実務経験を5年以上積んだ後、専門分野に特化したコンサルタントとして独立するケースや、企業のサステナビリティ部門やESG推進部門のマネジメント職へと進むパターンが一般的です。
特にカーボンニュートラル戦略の立案・実行を担当する部署では、エネルギー管理士の専門知識が高く評価されています。
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まとめ
エネルギー管理士は、脱炭素社会の実現に向けて企業のエネルギー戦略を牽引する重要な国家資格です。
本記事では、資格の概要から試験制度、合格率、キャリアパスまで幅広く解説してきました。
熱分野と電気分野の2種類があり、それぞれ専門性の高い知識と実務経験が求められます。
試験の難易度は決して低くなく、合格率は30%台と厳しい水準にあります。
しかし、計画的な学習と過去問分析、実務経験の活用により、合格の可能性は十分にあります。
資格取得後は、収入面での優遇や転職市場での高い評価など、多くのメリットが期待できます。
企業のESG経営が重視される現代において、エネルギー管理士の需要は今後さらに高まることが予想されます。
単なる省エネ担当者にとどまらず、企業の持続可能性戦略を支える専門家として、その役割はますます重要性を増すでしょう。
この記事が、エネルギー管理士を目指す方々の道標となり、持続可能な社会の実現に貢献する人材の育成に寄与できれば幸いです。