電気設備施工管理は、建設現場における電気設備工事の品質・工程・安全・予算を一元管理する重要な職種です。
資格取得から高収入を目指せるキャリアパスとして注目されていますが、具体的な仕事内容や必要スキルについては意外と知られていません。
この記事では、電気設備施工管理の仕事内容から資格、年収、将来性まで詳しく解説していきますので、就職・転職の参考にしてください。
電気設備施工管理とは?仕事内容と役割
電気設備施工管理とは、建築物やインフラの電気設備工事において、工事全体の進行を管理する仕事です。
オフィスビル、マンション、工場、病院などの建設現場で電気設備の設計図に基づいて適切に工事が進むよう監督します。
単なる技術者ではなく、マネジメント能力も求められるポジションです。
電気設備施工管理の基本的な仕事内容
電気設備施工管理技術者の具体的な業務は多岐にわたります。
設計図の確認、資材の発注、工程スケジュールの作成から、現場での施工品質チェック、協力業者との調整まで担当します。
また、発注者や元請け企業との折衝も重要な役割です。
主な仕事内容としては、まず施工計画の立案があります。
図面をもとに工程表を作成し、必要な人員や資材を算出します。
現場では電気工事の進捗管理や品質確認を行い、問題が発生した場合には迅速に対応策を講じます。
- 施工計画書・工程表の作成
- 必要資材の手配と管理
- 協力業者への指示と調整
- 現場での進捗・品質管理
- 安全管理と事故防止
- 各種検査や試験の実施
- 工事関連書類の作成
4大管理と現場での責任範囲
電気設備施工管理では「4大管理」と呼ばれる重要な責任領域があります。
これらは「品質管理」「工程管理」「安全管理」「原価管理」の4つです。
特に電気設備は目に見えない部分が多く、品質管理には高い専門性が求められます。
品質管理では、電気配線や機器の設置が設計図通りに行われているか、規格に適合しているかを確認します。
工程管理では、予定通りに工事が進んでいるかを常にチェックし、遅れが生じた場合は挽回策を講じます。
安全管理は特に重要で、感電事故や火災などの重大事故を防止するための対策が必須となります。
管理項目 | 具体的な業務内容 | |
---|---|---|
品質管理 | 設計図との整合性確認、規格適合検査、試験測定 | 絶縁抵抗測定、電圧・電流値チェック、接地抵抗測定 |
工程管理 | スケジュール作成、進捗管理、遅延対策 | 日程調整、人員配置、他業種との連携 |
安全管理 | 危険予知活動、安全教育、事故防止策 | 安全ミーティング実施、保護具着用指導、現場巡視 |
原価管理 | コスト計算、予算管理、経費削減 | 資材発注管理、労務費計算、コスト分析 |
電気工事と電気設備工事の違い
電気設備施工管理を理解するうえで、「電気工事」と「電気設備工事」の違いを知ることが重要です。
電気工事は主に配線や電気機器の取り付けなど、より直接的な作業を指します。
一方、電気設備工事は、その電気工事を含めた設備全体の計画・設計・施工・検査までを包括した概念です。
電気設備工事には、照明設備、動力設備、受変電設備、非常用電源設備、通信・情報設備など、幅広い範囲が含まれます。
電気設備施工管理技術者は、これらすべての工事において適切な管理を行う必要があります。
電気設備施工管理は、法令や規格への適合性を確保しながら、安全かつ効率的に工事を完了させることが求められます。
- 電気工事:配線工事、コンセント・スイッチ取付、照明器具設置など
- 電気設備工事:受変電設備、発電機設備、UPS、照明制御、情報通信設備など
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電気設備施工管理に必要な資格と取得方法
電気設備施工管理の仕事に就くためには、専門的な資格が必要です。
中でも電気工事施工管理技士は、この分野で最も重要な国家資格となります。
資格の等級によって携われる工事の規模や責任範囲が異なるため、キャリアアップには資格取得が欠かせません。
電気工事施工管理技士の概要と等級
電気工事施工管理技士は、建設業法に基づく国家資格で、1級と2級に分かれています。
この資格は建設業における電気工事の施工管理を行うために必要とされ、特に公共工事では必須です。
工事の規模によって必要な等級が決まっており、大規模工事では1級保持者が現場代理人や主任技術者として求められます。
1級電気工事施工管理技士は、あらゆる規模の電気工事を管理できる資格です。
特に請負金額4,500万円以上の工事では、監理技術者として1級資格が必要とされます(出典:SAT公式サイト、2024年)。
2級は中小規模の工事を対象としており、キャリアの初期段階で取得するケースが多いです。
- 1級電気工事施工管理技士:すべての規模の電気工事を管理可能
- 2級電気工事施工管理技士:中小規模の電気工事を管理可能
受験資格と試験内容
電気工事施工管理技士の試験は、一次検定と二次検定の2段階方式です。
令和6年度(2024年度)より受験資格が改訂され、受験しやすくなりました。
特に一次検定は満19歳以上であれば受験可能となり、学歴や実務経験を問わなくなっています(出典:CIC建設コンサルタント公式サイト、2024年)。
二次検定の受験資格には、一次検定合格に加えて実務経験が必要です。
1級では3年〜5年程度の実務経験が求められます。
2級では、それぞれ1年、2年、3年と短い期間設定になっています。
1級 | 2級 | |
---|---|---|
一次検定受験資格 | 満19歳以上(2024年改定) | 満19歳以上(2024年改定) |
二次検定受験資格 | 一次検定合格+実務経験 | 一次検定合格+実務経験 |
試験内容 | 一次:学科試験(択一式) 二次:記述式+口頭試問 | 一次:学科試験(択一式) 二次:記述式 |
最新合格率 | 一次:36.7% 二次:49.6% (2023年度、一般財団法人建設業振興基金) | 一次:47.5% 二次:51.4% (2023年度、一般財団法人建設業振興基金) |
試験内容は、一次検定が電気工事の法規、電気理論、施工管理法などの基礎知識を問う択一式問題です。
二次検定では、より実践的な施工管理能力を問う記述式問題となります。
1級では口頭試問も行われ、現場での判断力や応用力も試されます。
その他関連資格と取得のメリット
電気設備施工管理の分野では、電気工事施工管理技士以外にも役立つ資格があります。
電気工事士や電気主任技術者などの資格を併せて取得すると、より専門性が高まり、キャリアの幅が広がります。
特に第一種電気工事士は、自らが電気工事を行う際に必須となる資格です。
資格取得のメリットは多岐にわたります。
まず、就職・転職時の採用優位性が高まります。
また、社内でのポジションアップや給与アップにつながるケースも多く、資格手当として月額1万円〜3万円程度が支給される企業も少なくありません。
- 第一種/第二種電気工事士:電気工事の作業資格
- 第一種/第二種/第三種電気主任技術者:電気設備の保安監督者
- 消防設備士:消防設備の工事・点検資格
- エネルギー管理士:省エネ法に基づくエネルギー管理者
- 建築設備士:建築設備の設計・工事監理者
電気設備施工管理の年収とキャリアパス
電気設備施工管理は、専門性の高さから比較的高収入が期待できる職種です。
年収は経験年数や保有資格、勤務する企業規模によって大きく異なります。
また、技術者としての専門性を高めるだけでなく、マネジメント能力を磨くことでさらなるキャリアアップが可能です。
経験年数・資格別の年収相場
電気設備施工管理技術者の年収は、キャリアステージによって大きく変動します。
未経験からのスタートでは年収400万円前後が一般的ですが、経験を積み、資格を取得することで着実に収入は増加します。
特に1級電気工事施工管理技士の資格を取得すると、年収アップの大きなステップとなります。
2023年のGキャリア調査によれば、電気設備施工管理技術者の平均年収は550万円〜700万円程度です。
経験10年以上で1級資格保有者は、700万円〜900万円の年収が見込めます。
さらに大手ゼネコンや設備会社では、管理職に昇進することで1,000万円を超える年収も可能です。
経験年数 | 資格 | 平均年収(2023年調査) | |
未経験〜3年 | 3年未満 | 資格なし〜電気工事士 | 400万円〜450万円 |
中堅 | 3年〜10年 | 2級電気工事施工管理技士 | 450万円〜600万円 |
ベテラン | 10年以上 | 1級電気工事施工管理技士 | 600万円〜800万円 |
管理職 | 15年以上 | 1級電気工事施工管理技士 +電気主任技術者など | 800万円〜1,200万円 |
キャリアアップの道筋と将来性
電気設備施工管理のキャリアパスは複数存在します。
一般的には現場監督からスタートし、経験を積みながら資格を取得し、現場代理人や工事長へとステップアップします。
その後、複数の現場を統括する立場や、技術部門のマネージャーへと昇進するケースが多いです。
将来性の面では、カーボンニュートラルやスマートシティなどの取り組みが進む中、電気設備のスペシャリストの需要は今後も高まると予測されています。
特に再生可能エネルギー設備やEV充電設備、スマートビルディングなどの新しい分野での需要が拡大しています。
また、2024年以降、熟練技術者の大量退職が予想されており、若手・中堅技術者の重要性が一層高まっています。
- キャリアステップ例:現場監督 → 現場代理人 → 工事長 → 工事部長
- 専門分野特化:省エネ設備、自動制御、セキュリティシステムなど
- 資格ステップアップ:電気工事士 → 2級施工管理技士 → 1級施工管理技士 → 電気主任技術者
転職市場での需要と有利になるポイント
電気設備施工管理技術者は、建設業界全体で慢性的な人材不足となっており、転職市場での需要は非常に高い状況です。
特に1級電気工事施工管理技士の資格保持者は、引く手あまたの状況となっています。
転職サイトでの求人数も多く、未経験からのキャリアチェンジを支援するプログラムも充実しています。
転職市場で有利になるポイントとしては、まず資格保有が挙げられます。
1級・2級電気工事施工管理技士はもちろん、電気工事士や電気主任技術者などの関連資格も評価されます。
また、大規模物件や特殊設備(病院、データセンター、工場など)の施工経験も重視されます。
- 複数の電気関連資格の取得(特に国家資格)
- 大規模プロジェクトでの現場経験
- 特殊な電気設備(非常用電源、自家発電設備など)の知識
- BIM/CADなどのITスキル
- 英語力(海外プロジェクトや外資系企業では特に重要)
- コミュニケーション能力とチームマネジメント経験
2023年の調査によれば、転職による年収アップ率は平均15〜20%程度となっており、キャリアアップの手段として転職を選ぶ技術者も増えています(出典:Gキャリア調査、2023年)。
特に都市部の大手企業への転職では、年収が大幅に上がるケースも少なくありません。
ただし、会社規模だけでなく、やりがいや労働環境、将来性なども考慮した転職先選びが重要です。
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まとめ
電気設備施工管理は、建設現場における電気設備工事の品質・工程・安全・原価を管理する重要な職種です。
この記事では、その仕事内容から必要な資格、年収相場、キャリアパスまで詳しく解説しました。
特に2024年からは資格試験の受験条件が緩和され、19歳以上であれば一次検定を受験できるようになったことで、若い世代にもチャンスが広がっています。
また、平均年収550万円〜700万円と安定した収入が見込め、1級資格取得や経験を積むことでさらなる年収アップも期待できます。
カーボンニュートラルへの移行やスマートビルディングの普及など、電気設備の重要性は今後ますます高まると予想されています。
専門性の高い技術者として、安定したキャリアを築きたい方にとって、電気設備施工管理は非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。
この記事が、あなたのキャリア選択や資格取得の一助となれば幸いです。