１級管工事施工管理技士とは？受検資格や合格率、難易度を詳しく紹介

管工事施工管理技士は、空調設備や給排水設備などの管工事において、品質、工程、安全、予算を適切に管理するプロフェッショナルです。
特に1級管工事施工管理技士は、大規模な工事現場で監理技術者として活躍できる国家資格として、建設業界で高い評価を受けています。
技術者としてのキャリアアップを目指す方にとって、この資格は重要な転機となる可能性を秘めています。

しかし、1級管工事施工管理技士の試験は決して容易ではなく、受検資格や試験内容、効果的な学習方法について知ることが合格への第一歩となります。
また、資格取得後のキャリアパスや給与への影響など、将来を見据えた情報も重要です。
本記事では、1級管工事施工管理技士試験に関する詳細情報と、合格に向けた実践的なアドバイスをご紹介します。

これから受検を検討している方も、すでに準備を始めている方も、この記事を通じて1級管工事施工管理技士についての理解を深め、ぜひ効率的に資格を取得しましょう。

1級管工事施工管理技士の資格概要

1級管工事施工管理技士は、建設業法に基づいて国土交通大臣が指定する国家資格です。
管工事の施工管理を行うプロフェッショナルとして、工事の品質確保や安全管理において重要な役割を担います。
この資格は建設業界における技術者としての専門性と能力を証明するものとして高く評価されています。

資格の位置づけと重要性

1級管工事施工管理技士は、建設業法における監理技術者や主任技術者になるための国家資格です。
特に請負金額4,000万円以上の管工事現場では、監理技術者として1級資格保持者の配置が法律で義務付けられています。
このことからも、大規模工事における1級資格の重要性が理解できます。

近年では、建設業における技術者不足が深刻化する中、1級管工事施工管理技士の資格保持者は業界内で高い需要があります。
また、働き方改革や施工の効率化が求められる現代において、高度な専門知識と管理能力を持つ技術者の価値は一層高まっています。
そのため、長期的なキャリア形成を考える建設業界の技術者にとって、この資格は重要な武器となります。

さらに、公共工事の入札においても、1級管工事施工管理技士の資格保持者数が評価対象となることが多く、企業にとっても資格者を雇用することのメリットは大きいと言えます。
そのため、企業側も社員の資格取得を積極的に支援する傾向にあります。

管工事施工管理技士の業務範囲

管工事施工管理技士は、冷暖房設備、給排水設備、ガス設備、消火設備などの管工事の施工管理を担当します。
具体的な業務内容は多岐にわたり、設計図書の理解から始まり、施工計画の策定、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理までを包括します。
これらの業務を通じて、工事の品質と安全を確保しながら、予算内で工期通りに工事を完了させる重要な役割を担っています。

また、施工管理技士は現場での指揮・監督だけでなく、発注者や設計者との調整役としても機能します。
設計変更や施工上の問題が発生した際には、技術的知識を活かして適切な解決策を提案することも重要な仕事です。
さらに、竣工検査や引き渡し時の対応、アフターフォローまで、工事の全過程において中心的な役割を果たします。

近年では、BIM（Building Information Modeling）などのデジタル技術の活用や、環境に配慮した施工方法の採用など、新しい知識や技術の習得も求められています。
そのため、管工事施工管理技士には継続的な学習と技術向上が必要とされる専門職と言えるでしょう。

1級と2級の違い

管工事施工管理技士資格には1級と2級があり、それぞれ求められる知識レベルや役割、受検資格に大きな違いがあります。
最も大きな違いは、1級が「すべての規模の管工事」に対応できるのに対し、2級は「一定規模以下の管工事」に限定されることです。
具体的には、1級資格者は請負金額に関わらずすべての工事で監理技術者や主任技術者になれますが、2級資格者は4,000万円未満の工事に限られます。

試験内容の難易度も大きく異なります。
1級試験は高度な専門知識と実務経験に基づく判断力が問われるのに対し、2級試験はより基礎的な知識が中心となります。
また、受検資格についても1級の方が厳しく設定されており、実務経験年数も2級より多く必要とされます。

これらの違いを表にまとめると以下のようになります。

	1級管工事施工管理技士	2級管工事施工管理技士
対応可能な工事規模	すべての規模の管工事	4,000万円未満の管工事
試験難易度	高度な専門知識と応用力	基礎的な専門知識
第一次検定受検資格	19歳以上（受検年度末時点）	17歳以上（受検年度末時点）
必要実務経験	学歴により1〜5年	学歴により1〜3年
年収への影響	大きい（約30〜50万円増）	中程度（約10〜30万円増）

多くの技術者は、キャリアの初期段階で2級を取得し、経験を積んだ後に1級にステップアップするというキャリアパスを選択します。
2級から1級へのステップアップは、責任範囲の拡大や年収アップなど、キャリア発展において重要なポイントとなります。

1級管工事施工管理技士の受検資格と合格率

1級管工事施工管理技士試験は、一定の実務経験と学歴を持つ者に受検資格が与えられる試験です。
この試験は、学科試験と実地試験の2段階で構成されており、両方に合格することで資格を取得できます。
効果的な受検計画を立てる上で、受検資格や合格率を正しく理解することは非常に重要です。

受検資格の詳細

1級管工事施工管理技士試験の受検資格は、年齢と実務内容、実務経験の組み合わせによって決まります。
令和６年の制度改正により、要件や必要な実務経験年数などが大きく変わったので注意が必要です。

例えば、従来の制度では、１級管工事施工管理技士の第一次検定を受ける際に最長で15年以上の実務経験が必要でしたが、新制度では年齢が19歳を超えていれば誰でも受検することができます。
二次検定を受ける際に必要な実務経験も、最長5年に短縮されました
また、2級管工事施工管理技士の資格を取得している場合は、１級管工事施工管理技士の二次検定の実務経験が優遇されます。

第一次検定

第二次検定

これらの受検資格を満たしていることを証明するために、第二次検定の申込時には実務経験証明書の提出が必要となります。
実務経験証明書は勤務先の代表者の証明が必要なため、事前の準備が重要です。

試験の申込方法と費用

・住民票コード ・受検申込者の顔写真データ(JPEG 形式) ・2 級管工事施工管理技術検定第二次検定（旧実地試験含む）の検定合格番号(もしくは合格時の受検 番号)及び年度の申込みは、一般財団法人全国建設研修センターが運営する受検申込サイトでの手続きと書類郵送を行います。
申込期間は通常、試験の約4か月前から始まり、約2週間の受付期間があります。
2025年度の試験申込期間は、5月7日（水）〜5月21日（水）です。

申込みに必要な費用は、第一次検定、第二次検定それぞれ12,700円です。
申込事前情報登録時に必要な書類としては、以下のものが求められます。

一部書類は期日までに郵送する必要があります。
書類に不備があると受検できない場合もあるため、早めの準備と確認が重要です。
また、会社によっては申込みや費用の負担をサポートしてくれる場合もあるため、勤務先の制度を確認することをおすすめします。

年度別合格率の推移

1級管工事施工管理技士試験の合格率は、年度によって変動しますが、第一次検定だとおおよそ30%〜50%程度、第二次検定についてはおおよそ50%~60%程度で推移しています。
第二次検定の受検者は十分な実務経験を重ねた人であることから、1級管工事施工管理技士試験は決して容易ではない試験であることがわかります。

	第一次検定	第二次検定
2024年度	52.3%	76.2%
2023年度	37.5%	62.1%
2022年度	42.9%	57.0%
2021年度	24.0%	73.3%
2020年度	35.0%	61.1%

注目すべき点として、近年は合格率がやや上昇傾向にあることが挙げられます。
これは、働き方改革や人材不足を背景に、有資格者の需要が高まっていることが一因と考えられています。

1級管工事施工管理技士試験の難易度と対策

1級管工事施工管理技士試験は、専門的な知識と実務経験に基づく判断力が問われる難関試験です。
効率的に合格を目指すためには、試験の構成や出題傾向を正確に把握し、それに合わせた学習計画を立てることが重要です。
ここでは、試験の詳細な内容と、効果的な学習方法について解説します。

試験の内容

1級管工事施工管理技士試験は、第一次検定と第二次検定の2段階で構成されています。
第一次検定は例年9月上旬、第二次検定は例年12月上旬に実施され、第二次試験を受検するまでに実務経験が必要となります。

第一次検定は合計4時間30分の試験で、大きく分けて「機械工学」「施工管理法」「法規」の3分野から出題されます。
出題形式は四肢択一式で73問出題され、そのうちの60問を選択します。（必須問題あり）全て一問一点で、60%以上の正答率（60点以上）で合格となります。

第二次検定は、2時間の試験時間で記述式の問題が出題されます。
施工管理を行うために必要な知識及び能力を問う問題が中心で、施工要領図や空気調和設備に関する問題など、実務に即した判断力が求められます。
出題数６問のうち４問を選択し、正答率60%以上で合格となります。

効果的な学習方法

1級管工事施工管理技士試験に合格するためには、計画的かつ効率的な学習が不可欠です。
多くの合格者が実践している学習方法として、まずは過去問分析から始めることが挙げられます。
過去5年分程度の過去問を解くことで、出題傾向や自分の弱点分野を把握することができます。

第一次試験対策としては、テキストによる基礎知識の習得と問題演習の繰り返しが効果的です。
特に出題頻度が高い分野を中心に、重要ポイントを確実に理解することが重要です。
市販の問題集やオンライン学習サービスを活用し、同じ問題を複数回解くことで記憶の定着を図りましょう。

第二次試験対策としては、記述式の問題に慣れることが重要です。
実際に手を動かして解答を書く練習を繰り返し、時間配分にも注意しながら学習を進めましょう。
また、図表やグラフの読み取り方、現場写真からの状況判断など、実務に即した問題への対応力も養う必要があります。

多くの合格者が実践している効果的な学習方法をまとめると以下のようになります。

また、独学が難しいと感じる方は、通信講座や対面講座の利用も検討すると良いでしょう。
講座では効率的にポイントを学べるだけでなく、質問できる環境があることで理解が深まります。
特に実務経験が少ない方や、計算問題に苦手意識がある方には、専門の講座の活用がおすすめです。

1級管工事施工管理技士取得後のキャリア展望

1級管工事施工管理技士の資格を取得することは、建設業界でのキャリアにおいて大きな転機となります。
この資格は単なる知識の証明にとどまらず、実務上の権限拡大や収入アップ、キャリアの選択肢拡大など、多くのメリットをもたらします。
ここでは、資格取得後に期待できる具体的なキャリア展望について解説します。

資格取得によるメリット

1級管工事施工管理技士の資格取得による最大のメリットは、監理技術者として大規模工事を担当できるようになる点です。
建設業法では、請負金額4,000万円以上の工事現場には監理技術者の配置が義務付けられており、1級資格はこの要件を満たす重要な資格となります。
このため、資格取得により担当できる工事の規模と責任範囲が大きく広がります。

また、企業内での評価が向上することも大きなメリットです。
多くの建設会社では、1級管工事施工管理技士の資格保持者には資格手当が支給されるほか、昇進や昇格の際の評価項目となることも一般的です。
特に大手ゼネコンや設備会社では、この資格が管理職への登用条件となっているケースも少なくありません。

さらに、キャリアの選択肢が広がることも重要なメリットです。
1級資格を持つことで、より高度な工事のプロジェクトマネージャーや、技術コンサルタント、積算担当など、専門性の高いポジションへのキャリアパスが開けます。
また、独立して設計事務所や管工事会社を立ち上げる際にも、この資格は重要な武器となります。

1級管工事施工管理技士資格取得の主なメリットをまとめると以下のようになります。

年収アップと転職への影響

1級管工事施工管理技士の資格取得は、年収に直接的な影響を与えます。
まず、多くの企業では資格手当として月額2万円〜5万円程度（年間24万円〜60万円）が支給されます。
これは基本給とは別の手当てとして支給されるため、確実な収入増となります。

また、資格取得を契機として昇格するケースも多く、これにより基本給自体が上がることも期待できます。
特に、監理技術者として大規模工事を担当するようになると、責任手当などの追加手当が付くことも一般的です。
これらを総合すると、1級資格取得により年収が30万円〜50万円程度アップするケースが多いと言えます。

転職市場においても、1級管工事施工管理技士の資格は高く評価されます。
特に管工事を行う設備会社やゼネコンでは、監理技術者として配置できる有資格者の需要が高く、未経験分野への転職においても有利に働くことがあります。
転職サイトの調査によると、1級資格保持者の求人は2級と比較して平均20%程度給与水準が高い傾向にあります。

年齢別に見ると、1級管工事施工管理技士の資格保持者の平均年収は以下のように推移します。

	資格なし	1級資格あり	差額
20代後半	約450万円	約500万円	約50万円
30代	約550万円	約620万円	約70万円
40代	約650万円	約750万円	約100万円
50代以上	約700万円	約850万円	約150万円

この表からわかるように、キャリアが進むにつれて資格の有無による年収差は拡大する傾向にあります。
これは、資格取得者がより責任のあるポジションに就き、経験を積むにつれてその価値がさらに高まるためです。
特に50代以上では、管理職としての経験と1級資格の組み合わせが高い評価につながります。

まとめ

1級管工事施工管理技士は、管工事業界において高い専門性と技術力を証明する重要な国家資格です。
本記事では、この資格の概要から受検資格、試験の難易度と対策、そして取得後のキャリア展望まで幅広く解説してきました。
この資格は単なる知識の証明ではなく、実務上の権限拡大、収入アップ、キャリアの選択肢拡大など、多くのメリットをもたらします。

資格取得には相応の努力が必要ですが、平均合格率約20~50%の難関試験に合格するためには、計画的な学習と効率的な試験対策が欠かせません。
過去問分析から始め、基礎知識の習得と問題演習の繰り返しによる知識の定着、そして模擬試験による実力チェックという流れで学習を進めることが効果的です。

取得後は監理技術者として大規模工事を担当できるようになるほか、資格手当による収入アップ、昇進・昇格の評価対象となるなど、様々なメリットが期待できます。
年収においても、資格なしと比較して数十万円から百万円以上の差が生じることも珍しくありません。
キャリアパスも管理職路線、専門家路線、職域拡大路線など、多様な選択肢が広がります。

建設業界の技術者不足が続く中、1級管工事施工管理技士の価値は今後もさらに高まることが予想されます。
この記事が、資格取得を目指す方々の一助となり、皆様のキャリアアップに寄与できれば幸いです。
難関資格に挑戦することは決して容易ではありませんが、その先には確かな成長と新たな可能性が広がっています。