測量士は国土の正確な測定と記録を担う重要な専門職です。
土地や建物の位置関係、高低差などを正確に測定し、都市計画や建設工事の基礎となるデータを作成します。
近年はテクノロジーの進化により測量技術も高度化し、ドローンやレーザー測量など新しい技術が導入されています。
測量士の仕事に興味を持った方は、資格取得に向けた学習から始めてみるのがおすすめです。
この記事では測量士の仕事内容や年収、資格取得方法などについて詳しく解説していきますので、キャリア選択の参考にしてください。
測量士の仕事内容と役割
測量士は国土の形や地形を正確に測定し記録する専門家です。
建設工事や都市計画の基礎となる重要な役割を担っており、その精度が国土の開発や管理に大きく影響します。
まずは測量士の基本的な仕事内容と役割について見ていきましょう。
測量士の定義と国家資格としての位置づけ
測量士とは、測量法に基づいて国家資格として定められた専門技術者のことです。
土地の形状や位置関係を正確に測定し、地図や各種図面を作成する技術を持つプロフェッショナルです。
測量士は国土交通省が管轄する国家資格であり、測量に関する唯一の国家資格です。
測量士の資格を持つことで、「基本測量」と「公共測量」を実施する権限が与えられます。
これは測量法により明確に規定されており、重要な測量業務を行うために必須の資格となっています。
特に公共事業における測量では、測量士の資格保有者が必要人数分配置されていなければ業務を受注できないというルールがあります。
- 基本測量:国土地理院が行う、国土の骨格となる基本的な測量
- 公共測量:国や地方自治体等が公共事業のために行う測量
- 一般測量:民間企業などが行う上記以外の測量
建設・都市計画における測量士の具体的な業務
測量士の日常業務は多岐にわたりますが、主に現場での測量作業とデータ処理・図面作成の2つに大別できます。
現場では三脚付きの測量機器(トータルステーションやGNSS受信機など)を使用して、正確な位置や高さを測定します。
近年はドローンやレーザースキャナーなど最新技術も積極的に導入されています。
建設現場では、工事の着工前の測量から完成後の確認測量まで、様々な段階で測量士の技術が必要とされます。
道路や鉄道、ダム、トンネルといったインフラ整備においても、精密な測量が工事の成否を左右します。
都市計画では、地籍調査や土地区画整理事業において、土地の境界を明確にするための測量業務が重要です。
- 基準点測量:正確な位置を示す基準点を設置する作業
- 地形測量:地表の起伏や形状を測定し地形図を作成
- 路線測量:道路や鉄道などの線形を決定するための測量
- 河川測量:河川の形状や水位などを測定
- 用地測量:土地の境界を明確にするための測量
測量士と測量士補の違い
測量に関する国家資格には「測量士」と「測量士補」の2種類があります。
測量士が上位資格、測量士補が下位資格となり、権限や業務範囲に明確な違いがあります。
測量士は全ての測量作業の計画立案から実施、成果の確認まで一貫して行う権限を持ちます。
一方、測量士補は測量士の指示のもとで測量作業を行うことができますが、測量計画の策定や最終成果の確認には関わることができません。
測量業界では、まず測量士補として経験を積み、その後測量士資格を取得するというキャリアパスが一般的です。
測量士は高度な専門知識と技術が求められるため、実務経験や体系的な学習が重要になります。
測量士 | 測量士補 | |
---|---|---|
業務範囲 | 測量に関する全ての業務 | 測量士の指示のもとでの作業 |
権限 | 測量計画立案・作業管理・成果確認 | 測量作業の実施 |
試験難易度 | 高難度(合格率約13%) | 中難度(合格率約20%) |
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測量士の資格取得方法と難易度
測量士は国土交通省が管轄する国家資格で、毎年多くの受験者がチャレンジしています。
合格するためには測量に関する専門知識と計算能力が求められるため、適切な学習計画を立てましょう。
ここでは最新の試験情報と効果的な学習方法について解説します。
測量士試験の概要と最新の合格率
測量士試験は毎年5月に全国の主要都市で実施される筆記試験です。
直近の令和6年度(2024年度)の試験では、3,717名が受験し、合格者は485名でした。
合格率は13.0%となっており、決して容易な試験ではないことがわかります(出典:国土地理院、2024年)。
過去5年間(2020~2024年度)の平均合格率は約12.7%で推移しており、安定して難関試験であることがわかります。
ただし、毎年の出題傾向や難易度には若干の変動があるため、最新の傾向を把握することが重要です。
受験資格については、学歴や実務経験によって異なる条件が設定されています。
- 測量に関する専門教育を受けた高校・大学卒業者:卒業後すぐに受験可能
- 測量士補の資格を持つ者:実務経験3年以上で受験資格取得
- その他の条件:一般大学卒業後1年以上の実務経験、高校卒業後3年以上の実務経験など
試験内容と出題傾向
測量士試験は、多肢選択式と記述式の問題で構成されています。
試験科目は「測量に関する法規(測量法など)」と「測量に関する知識と技術」の2分野に大別されます。
特に技術分野は、基準点測量、地形測量、写真測量、GISなど多岐にわたる内容が出題されます。
近年の出題傾向としては、最新の測量技術に関する問題が増加しています。
例えば、GNSS測量やリモートセンシング、UAV(ドローン)を活用した測量技術などの出題が目立つようになりました。
また、実務に即した計算問題も多く出題されるため、計算力と実践的な知識の両方が求められます。
- 測量に関する法規(測量法、国土調査法など)
- 基準点測量(三角測量、水準測量など)
- 応用測量(路線測量、河川測量、用地測量など)
- 地形測量と写真測量
- 地理情報システム(GIS)
- 測量計画と誤差論
効果的な学習方法と期間
測量士試験の合格を目指すには、計画的な学習が欠かせません。
一般的に必要な学習期間は、測量の実務経験がある人で6か月~1年、未経験者なら1年以上が目安とされています。
特に初学者は、基礎的な数学や物理の知識から固めていく必要があります。
効果的な学習法としては、まず市販の参考書や問題集で基礎知識を身につけ、その後過去問演習を重ねるという方法が一般的です。
近年は通信講座や対策セミナーなども充実しており、独学が難しい方はこうした外部リソースの活用も検討すると良いでしょう。
特に過去問題の演習は極めて重要で、最低でも直近5年分は解いておくことが推奨されています。
- 基礎学習:測量の原理や数学の基礎知識を身につける(2~3ヶ月)
- 分野別学習:各分野の専門知識を深める(3~4ヶ月)
- 問題演習:過去問や模擬問題を解いて実践力を養う(2~3ヶ月)
- 弱点補強:苦手分野を重点的に学習する(1~2ヶ月)
測量士の年収・将来性と必要なスキル
測量士としてのキャリアを考える上で、年収や将来性、求められるスキルについて知ることは非常に重要です。
測量技術の進化に伴い、測量士に求められる能力も変化してきています。
ここでは最新の状況を踏まえながら、測量士のキャリアパスについて詳しく見ていきましょう。
測量士の平均年収と給与体系
測量士の年収は、勤務先や経験年数、保有資格によって大きく異なります。
一般的に、測量会社や建設コンサルタント会社に勤務する測量士の年収は400万円~600万円程度とされています。
ただし、これは業界平均であり、個人の能力や勤務先の規模によって上下します。
経験を積み、管理職になると年収600万円~800万円程度まで上昇する傾向があります。
また、測量士の資格に加えて、技術士や土地家屋調査士などの関連資格を取得することで、さらに収入アップが期待できます。
公務員として国や地方自治体で働く測量士は、安定した給与体系と福利厚生が魅力です。
経験年数 | 一般的な年収レンジ | |
---|---|---|
新人~5年 | 3~5年 | 350万円~450万円 |
中堅 | 5~10年 | 450万円~600万円 |
ベテラン・管理職 | 10年以上 | 600万円~800万円以上 |
キャリアパスと将来性
測量士としてのキャリアパスは多様です。
測量会社や建設コンサルタント会社で経験を積んだ後、専門性を高めて特定分野のスペシャリストになる道があります。
また、管理職として測量チームをまとめるマネジメント職に進むケースも多く見られます。
将来性については、国土インフラの維持管理や災害対策の重要性が高まる中、測量技術者の需要は今後も安定して見込まれています。
特に、近年の自然災害の増加により、防災・減災のための地形測量の重要性が再認識されています。
一方で、AIやドローン技術の進化により従来の測量作業の一部は自動化される傾向にあるため、新技術への適応力が求められるようになっています。
求められる能力・適性
測量士に求められる基本的な能力としては、正確な測定技術と数学的思考力が挙げられます。
誤差を最小限に抑えた精密測量を行うためには、細部まで注意を払う正確さと忍耐力が不可欠です。
また、測量データを処理・分析するためには、数学的な知識とコンピュータスキルも重要となります。
近年はテクノロジーの進化により、測量士に求められるスキルも変化しています。
従来の測量技術に加えて、GNSS測量やドローン測量、3Dレーザースキャニングなどの最新技術を使いこなす能力が重視されるようになりました。
また、測量データをGISで処理・分析するスキルも、現代の測量士には欠かせないものとなっています。
- 数学的思考力:三角関数や誤差理論などの数学的知識
- 空間認識能力:立体的な地形を把握する力
- IT・デジタルスキル:測量ソフトやGISの操作スキル
- コミュニケーション能力:現場での連携やクライアントとのやり取り
- 体力・屋外作業への適性:現場での測量作業に必要な体力
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まとめ
測量士は国土の正確な測定と記録を担う重要な専門職であり、その仕事は社会インフラの整備や維持に欠かせないものです。
測量士の資格は国家資格として高い専門性を認められており、測量業界ではキャリアアップの重要なステップとなっています。
資格取得には一定の難易度がありますが、計画的な学習と実践的な問題演習により合格を目指すことができます。
令和6年度(2024年度)の試験では合格率13.0%と難関ですが、しっかりとした対策を講じることで十分に挑戦可能です。
測量士の年収は経験や勤務先によって異なりますが、専門性の高い技術職として安定した収入が期待できます。
また、デジタル技術やAIの進化に伴い測量技術も日々進化しているため、新しい技術に対する適応力を持ち続けることが重要です。
測量という専門分野に興味がある方は、まずは測量士補の資格取得から始め、実務経験を積みながらステップアップしていくことをおすすめします。
この記事を参考に、測量士という専門職のキャリアパスを検討してみてください。
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