1級建築士になるには?必要な学歴や実務経験を紹介

1級建築士になるには?必要な学歴や実務経験を紹介

建築業界の最高峰の国家資格である1級建築士。
この資格を取得するための道のりは決して簡単ではありませんが、建築分野でのキャリアを確立したい方にとって非常に価値のある目標です。

1級建築士になるためには、一定の学歴と実務経験が必要であり、厳しい試験を突破しなければなりません。
資格取得後は、設計事務所や建設会社での活躍はもちろん、独立開業の道も開けます。

この記事では、1級建築士になるための具体的な条件や試験内容、効果的な勉強法から資格取得後のキャリアパスまで、詳しく解説していきます。
建築のプロフェッショナルを目指す方は、ぜひ本記事を道標としてご活用ください。

目次

1級建築士になるために必要な学歴や受験資格

1級建築士は建築の専門家として最も権威ある国家資格です。この資格を取得するには、定められた学歴と実務経験を満たす必要があります。

受験資格の条件は建築士法によって厳格に定められており、誰でも簡単に挑戦できるものではありません。
しかし、条件を満たせば、建築学科以外の出身者や独学での合格も可能です。

1級建築士試験の受験資格の概要

1級建築士試験を受けるためには、学歴と実務経験の両方が必要です。
建築士法第14条によれば、1級建築士試験は国土交通大臣が行い、一定の学歴と実務経験を有する者が受験できると定められています。

受験資格の基本的な要件は、「建築に関する知識及び技能について国土交通大臣が定める資格を有すること」です。
この資格とは、具体的には学歴と実務経験の組み合わせを指します。

例えば、大学の建築学科卒業者なら2年以上の実務経験が必要です。
受験申込時には、学歴を証明する卒業証明書と、実務経験を証明する実務経験証明書の提出が必要となります。

学歴別に必要な実務経験年数

1級建築士試験の受験資格は、学歴によって必要な実務経験年数が異なります。
これは高等教育機関での建築に関する専門教育の度合いを考慮した制度設計となっています。

大学で建築学科を卒業した場合は2年以上の実務経験が必要です。
建築学科以外の学科(例えば土木工学科など)を卒業した場合は3年以上の実務経験が求められます。
短期大学や高等専門学校の建築学科卒業者は4年以上、それ以外の学科卒業者は5年以上の実務経験が必要です。
高等学校の建築学科卒業者は7年以上、それ以外の学科卒業者は8年以上の実務経験を積まなければなりません。

建築学科卒業建築学科以外卒業
大学2年以上3年以上
短大・高専4年以上5年以上
高等学校7年以上8年以上
その他10年以上11年以上

上記の学歴に該当しない場合は、10年以上の実務経験が必要となります。

また、2級建築士または木造建築士の資格を持つ場合は、その業務に従事した期間を実務経験として算入できる特例もあります。

実務経験として認められる業務内容

1級建築士の受験資格として認められる実務経験には、特定の業務内容が定められています。
建築士法施行規則第10条によれば、「建築物の設計、工事監理、建築工事の指導監督、建築行政に関する事務」などが該当します。

設計業務としては、意匠設計、構造設計、設備設計などが含まれ、建築事務所などでの設計補助業務も認められます。
工事監理業務では、建築現場での施工状況の確認や施工図のチェックなどが該当します。
建築工事の指導監督には、ゼネコンや工務店などでの施工管理業務が含まれます。

特に注意すべき点として、CADオペレーターとしての単純な製図業務だけでは実務経験として認められないケースがあります

独学でも1級建築士になれるのか

1級建築士試験は、専門学校や予備校などに通わなくても、独学で合格することは可能です。
しかし、試験範囲が広く、特に製図試験では実践的なスキルが求められるため、完全な独学での合格はかなりの難易度があります。

独学で挑戦する場合は、市販の参考書や過去問題集を徹底的に活用することが大切です。
最近では、オンライン講座や通信教育なども充実しており、これらを利用することで独学でも効率良く勉強することができます。

独学のメリットはコスト面と自分のペースで学習できる点ですが、疑問点を即座に解決できないというデメリットもあります。
そのため、建築士受験者向けのオンラインコミュニティに参加するなど、情報交換の場を確保しておくと良いでしょう。

1級建築士試験の内容と勉強法

1級建築士試験は、学科試験と設計製図試験の二種類が実施されます。合格するためには、両方の試験に合格する必要があります。

試験は毎年一度実施され、学科試験は例年7月に、設計製図試験は10月に行われます。

それぞれの試験には特徴があり、効果的な対策方法も異なります。

学科試験の出題分野と出題形式

1級建築士の学科試験は、建築計画、建築環境・設備、建築構造、建築施工、建築法規の5分野から出題されます。

試験は「学科Ⅰ」と「学科Ⅱ」の2つの部分に分かれており、合計6時間に及ぶ長丁場です。
学科Ⅰは四肢択一式の問題で、各分野から12問ずつ、計60問が出題されます。
学科Ⅱは計算問題や記述式問題で、全5問が出題され、そのうち3問を選択して解答します。

合格基準は、学科Ⅰと学科Ⅱの総合点で判定され、例年60%程度の正答率が求められます。

特に難易度が高いのは構造計算と環境・設備の計算問題で、これらの分野は重点的に対策する必要があります。

製図試験の内容とポイント

設計製図試験は、学科試験合格者のみが受験できる実技試験です。
指定された建築物の設計図書(平面図、立面図、断面図、矩計図など)を、6時間30分という限られた時間内に手書きで作成します。
出題される建築物は年によって異なりますが、近年では「美術館」「複合施設」「図書館」「福祉施設」などの公共建築物が多く出題されています。

製図試験では、単に図面を描く技術だけでなく、課題の要求条件を読み解き、適切な設計解を導き出す能力が求められます。
効果的な対策としては、過去の出題パターンを研究し、時間配分を意識した製図演習を繰り返すことが挙げられます。

また、製図試験対策講座に参加し、プロの添削指導を受けることも合格への近道といえるでしょう。

効率的な学習計画の立て方

1級建築士試験に合格するためには、計画的な学習が欠かせません。
一般的に、仕事をしながら勉強する場合、学科試験対策に約6か月、製図試験対策に約3か月の勉強期間が必要だとされています。

学習計画を立てる際のポイントは、まず自分の得意・不得意分野を把握することです。
模擬試験や過去問を解いて現状の実力を確認し、弱点分野には時間を割いて重点的に対策する戦略が効果的です。

学科試験対策では、初めに教科書的な参考書で基礎知識を固め、その後、過去問や問題集で実践力を養うという流れが一般的です。

平日は1日2〜3時間、休日は5〜6時間の学習時間を確保できると理想的ですが、短時間でも毎日継続することが何より重要です。

おすすめの参考書と問題集

1級建築士試験の勉強には、質の高い参考書や問題集を選ぶことが重要です。
学科試験の基本書としては、「1級建築士試験学科テキスト」(総合資格)や「1級建築士試験設計製図テキスト」(日本建築学会)などが定評があります。

過去問題集としては、「1級建築士試験学科過去問題集」(総合資格)や「1級建築士試験学科問題解説集」(建築資料研究社)などが詳しい解説付きで理解を深めるのに役立ちます。

製図試験対策には、「1級建築士設計製図試験課題対策集」(建築資格研究会)や「設計製図試験対策サブノート」(日建学院)などが実践的です。

初めて学習する方は、まず体系的に学べる基本書から始め、徐々に応用問題にも範囲を広げ、さらに過去問や模擬問題に取り組むのが効果的です。

最近では、スマートフォンやタブレットで学べるアプリや電子書籍も充実しており、隙間時間を活用した学習にも便利です。

1級建築士試験の合格率と難易度

1級建築士試験は国家資格の中でも難関とされ、その合格率の低さから難易度の高さがうかがえます。
試験の特徴を理解し、過去の傾向を分析することで、効果的な対策を立てることができます。

ここでは、最新の合格率データや試験の難易度について詳しく見ていきましょう。

最新の合格率データと傾向

1級建築士試験の合格率は例年10〜20%程度と非常に低く、難関資格であることを示しています。
令和4年度(2022年度)の学科試験の受験者数は13,214名で、そのうち合格者は3,224名、合格率は約24.4%でした。

製図試験については、受験者数3,174名に対し合格者は1,313名で、合格率は約41.4%となっています。
学科試験と製図試験の両方を考慮した最終的な合格率は約10%程度となり、10人受験して1人しか合格しないという厳しい試験であることがわかります。

近年の傾向としては、学科試験では建築法規分野からの出題が増加傾向にあり、最新の法改正に関する知識が求められています。
製図試験では、少子高齢化や環境問題など、社会的課題に対応した設計提案が求められるようになっています。

学科試験と製図試験の難易度比較

1級建築士試験において、学科試験と製図試験はそれぞれ異なる難しさを持っています。
学科試験は広範囲の専門知識と計算能力が求められ、「知識の幅と深さ」が試されます。
特に、構造力学や環境工学の計算問題は難易度が高く、多くの受験者が苦戦するポイントです。

一方、製図試験は限られた時間内に完成度の高い設計図を作成する必要があり、「技術と時間管理能力」が試されます。
製図試験では、課題文の読解力や要求条件を満たす設計解の提案力、そして図面表現力が複合的に評価されます。

多くの受験者は学科試験の方が難しいと感じる傾向にありますが、製図試験は得点のばらつきが大きく、合格ラインを超えるためには一定以上の技術水準が必要です。

合格者の平均学習時間と勉強法

1級建築士試験の合格者は、一般的に学科試験対策に600〜1,000時間、製図試験対策に300〜500時間程度の学習時間をかけています。
これを月単位に換算すると、学科試験対策に6〜8ヶ月、製図試験対策に3〜4ヶ月の期間が必要となります。

合格者の勉強法としては、平日は毎日2〜3時間、休日は5〜8時間の学習を継続するパターンが多く見られます。
学科試験対策では、初めに基礎知識の習得に時間をかけ、試験日の2〜3ヶ月前からは過去問演習を中心に実践力を養うという流れが効果的です。

製図試験対策では、過去の課題を時間内に描く訓練を繰り返し、添削を受けて改善点を明確にしていくことで着実に実力をつけることができるでしょう。
多くの合格者が「継続的に学習すること」と「弱点分野を集中して強化すること」を成功のポイントとして挙げています。

合格までにかかる平均期間

1級建築士試験に初挑戦で合格する人は少なく、多くの受験者が複数回の挑戦を経て合格に至ります。
統計によれば、学科試験の平均合格回数は2〜3回、製図試験も含めた最終合格までは平均3〜4回の受験が必要とされています。

実務経験を積みながら受験する場合、最初の受験から最終合格までに3〜5年かかるケースも珍しくありません。
特に、仕事と勉強の両立が難しい社会人受験者にとっては、長い時間を要することを覚悟してください。

ただし、計画的な学習と効率的な試験対策によって、合格までの期間を短縮することは可能です。
過去問の分析に基づいた的確な対策と、自分の弱点を克服するための集中学習が、早期合格への鍵となります。

1級建築士資格取得後のキャリアパス

1級建築士の資格を取得することは、建築業界でのキャリアの大きな転機となります。
この資格を持つことで、職域が広がり、収入アップや独立の可能性も高まります。
資格取得後のキャリアパスにはさまざまな選択肢があり、自分の適性や志向に合わせた道を選ぶことができます。

1級建築士の主な就職先と年収

1級建築士の主な就職先としては、設計事務所、ゼネコン(総合建設業)、ハウスメーカー、不動産デベロッパー、官公庁などが挙げられます。
設計事務所では意匠設計や構造設計を担当し、建築物の設計から工事監理までを一貫して手掛けることができます。
ゼネコンでは設計部門や施工管理部門で活躍でき、大規模プロジェクトに関わる機会も多くなるでしょう。

年収については、勤務先や経験年数、個人の実績によって大きく異なりますが、一般的に1級建築士資格取得後は年収アップが期待できます。
設計事務所勤務の場合、取得直後で年収500〜600万円程度、経験を積むと700〜1,000万円以上になることも珍しくありません。
ゼネコンや大手ハウスメーカーでは、資格手当が付くケースが多く、役職と組み合わせると1,000万円を超える年収を手にすることも可能です。

独立開業するための条件と準備

1級建築士資格を取得したら、将来的には独立して建築士事務所を開設するという選択肢もあります。
独立開業するためには、建築士事務所登録が必要であり、これには一定の条件を満たす必要があります。

まず、建築士事務所の開設には、建築士事務所に名称や所在地などを登録し、都道府県知事の免許を受ける必要があります

また、建築士事務所の管理建築士になるためには、1級建築士資格取得後3年以上の実務経験と管理建築士講習の受講が必要です。

独立前には、顧客獲得ルートの確保や、事務所運営に必要な資金計画、賠償責任保険への加入など、様々な準備が必要になります。
成功している独立建築士の多くは、独立前に大手設計事務所などで十分な実績を積み、人脈を築いてから開業しています。

1級建築士と関連資格の組み合わせ

1級建築士資格と他の関連資格を組み合わせることで、さらに専門性を高め、キャリアの幅を広げることができます。

特に相乗効果が期待できる資格としては、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士、建築設備士、技術士(建設部門)などがあります。
構造設計一級建築士は、一定規模以上の建築物の構造設計を行う際に必要な資格で、高度な構造設計能力が証明されます。
設備設計一級建築士は、設備設計分野での専門性を示す資格で、環境や省エネに配慮した設計が求められる現代において価値が高まっています。

また、建築施工管理技士の資格を持つと、設計だけでなく施工面でも専門知識を持つ総合的な建築技術者として評価されます。
特定の分野に特化したい場合は、インテリアプランナーや福祉住環境コーディネーターなどの資格も有効です。

  1. 構造設計一級建築士:高度な構造設計能力を証明する資格。
  2. 設備設計一級建築士:環境や省エネに配慮した設計能力を示す資格。
  3. 建築施工管理技士:設計・施工の総合的な建築技術者としての評価。
  4. インテリアプランナー:特定のデザイン分野で専門性を発揮する資格。
  5. 福祉住環境コーディネーター:福祉分野での専門知識を証明する資格。

キャリアアップのための継続学習

1級建築士は資格取得がゴールではなく、継続的な学習と経験の積み重ねが重要です。
建築業界は技術革新や法規制の変更が頻繁に行われるため、最新の知識やスキルを常にアップデートする必要があります。

建築士法に基づく定期講習(3年ごと)は受講が義務付けられており、業務に必要な知識や技術の維持・向上を図ります。
また、専門分野を深めるための各種セミナーや研修に積極的に参加することも重要です。

近年では、環境配慮型建築やBIM(Building Information Modeling)などの新しい設計手法、耐震・防災設計などの専門知識が求められています。

建築関連の学会や協会に所属し、同業者とのネットワークを広げることもキャリア発展につながります。

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まとめ

1級建築士になるためには、一定の学歴と実務経験が必要であり、難関の試験を突破しなければなりません。
大学の建築学科卒業者なら2年以上、高校卒業者なら7年以上の実務経験が求められ、独学での合格も可能ですが、計画的な学習が不可欠です。

試験は学科と製図の2段階で実施され、合格率は約10%と非常に厳しいものです。
合格者は平均600〜1,000時間の学習時間を投じており、多くの場合、複数回の受験を経て最終合格に至ります。

資格取得後は、設計事務所やゼネコンでの活躍はもちろん、独立開業の道も開けており、年収アップや専門性の向上が期待できます。
建築業界でのキャリアを確立したい方にとって、1級建築士資格取得は非常に価値のある目標といえるでしょう。

難しい道のりではありますが、計画的な準備と継続的な努力で、あなたも建築のプロフェッショナルとして活躍することができます。

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この記事を書いた人

アイピアジョブ 編集部

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