型枠大工は建設現場において、コンクリート構造物の「型」を作る専門職です。
建物の強度や美観を左右する重要な役割を担い、技術と経験が高く評価される職人技の世界です。
この記事では、型枠大工の仕事内容や収入、必要なスキルについて詳しく解説していきます。
建設業界への就職や転職を考えている方は、ぜひ型枠大工という職業の魅力と可能性を知るきっかけにしてください。
型枠大工の基本と役割
型枠大工は建設業界の中でも専門性の高い職種として知られています。
コンクリート建築の基礎となる重要な役割を担っており、建物の品質を左右する存在です。
まずは型枠大工の基本的な役割と重要性について見ていきましょう。
型枠大工とは何か
型枠大工とは、コンクリート構造物を作る際に必要な「型枠」を組み立てる専門職です。
コンクリートは液体状で打ち込まれるため、固まるまでの間、形を保持するための枠が必要になります。
この枠を「型枠」と呼び、これを正確に組み立てるのが型枠大工の主な仕事です。
型枠大工は単に枠を組むだけではなく、設計図面を読み解き、寸法や角度を正確に測定し、強度計算も考慮しながら作業を進めます。
使用する材料は主に木材やアルミ、鋼製の型枠システムなどさまざまです。
現代の建設現場では、安全性や作業効率を高めるため、システム型枠と呼ばれる規格化された資材も多く使われています。
型枠工事は建築工程の初期段階で行われるため、この作業の精度が建物全体の品質に大きく影響します。
そのため、型枠大工には高い技術力と責任感が求められるのです。
正確な寸法で型枠を組むことは、建物の構造的安全性を確保する上で極めて重要な工程となっています。
建設現場における型枠大工の重要性
型枠大工の仕事は、建物の「骨組み」を形作る重要な役割を担っています。
コンクリート構造物の形状、寸法、表面の仕上がりは、すべて型枠の精度によって決まります。
型枠工事の品質が低いと、完成した建物に歪みや欠陥が生じる可能性があります。
また、型枠大工は建設現場の安全性にも大きく関わっています。
型枠が適切に設置されていないと、コンクリート打設時に型枠が崩れるなどの事故につながる恐れがあります。
そのため、型枠の強度計算や支保工の設置なども型枠大工の重要な業務となっています。
- 建物の形状と寸法の正確性を確保する
- コンクリート構造物の表面品質を左右する
- 建設工事の安全性を確保する
- 工期に大きな影響を与える重要工程を担当する
さらに、型枠工事の進捗は全体の工期に大きく影響します。
型枠の組立てが遅れると、後続の工程すべてに遅れが生じることになります。
このように、型枠大工は建設プロジェクト全体の成功に大きく貢献する、縁の下の力持ちとも言える存在なのです。
型枠施工の基本工程
型枠施工は、一連の工程に沿って進められます。
基本的な流れを理解することで、型枠大工の仕事の全体像がつかめるでしょう。
まず、型枠施工の基本工程は以下のように進みます。
- 図面の読み取りと準備作業
- 墨出し(位置決め)
- 支保工の設置
- 型枠の組立て
- 型枠の固定と調整
- コンクリート打設
- 養生期間
- 型枠の解体(脱型)
最初に設計図面を正確に読み取り、必要な材料や道具を準備します。
次に、型枠を設置する位置を正確に決める「墨出し」という作業を行います。
その後、型枠を支える「支保工」を設置し、型枠を組み立てていきます。
型枠の組立てが完了したら、その強度や精度を確認し、必要に応じて調整します。
すべての準備が整ったら、コンクリートを打設し、コンクリートが固まるまで養生期間を設けます。
コンクリートが十分に硬化したことを確認した後、型枠を解体する「脱型」作業を行います。
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型枠大工の具体的な仕事内容
型枠大工の具体的な仕事内容について、より詳しく見ていきましょう。
日々の作業の流れや使用する道具、安全管理の方法など、実際の現場で行われている作業について解説します。
これから型枠大工を目指す方にとって、具体的なイメージを持つ助けになるでしょう。
一日の作業の流れ
型枠大工の一日は早朝から始まります。
通常、建設現場は朝7時か8時には作業が開始されることが多いです。
まず、朝礼で当日の作業内容や安全確認を行い、その後具体的な作業に取りかかります。
午前中は主に型枠の組立てや調整作業を行います。
昼食休憩を挟んで午後の作業に移り、夕方には翌日の準備や現場の清掃を行って一日を終えるのが一般的です。
作業の進捗状況によっては残業することもありますが、近年は働き方改革の影響で長時間労働は減少傾向にあります。
実際の作業内容は工事の進捗状況によって日々変化します。
型枠の組立て作業が中心の日もあれば、コンクリート打設の立会いや型枠の解体作業に集中する日もあります。
柔軟に対応できる適応力も型枠大工には求められます。
主な作業と使用する道具
型枠大工が日常的に行う主な作業と、そこで使用される道具について見ていきましょう。
型枠大工の仕事は、非常に多くの専門的な道具を使いこなす技術が必要です。
これらの道具を効率よく使いこなせるかどうかが、作業の質と速度に大きく影響します。
- 墨出し作業:メジャー、墨つぼ、水平器、チョーク
- 型枠の組立て:電動ノコギリ、釘打ち機(タッカー)、ハンマー、インパクトドライバー
- 型枠の固定:バール、レンチ、結束線、クランプ
- 型枠の解体:バール、ハンマー、電動工具
墨出し作業では、設計図面に基づいて正確に寸法を測り、型枠を設置する位置に印をつけます。
この作業の精度が後工程すべての精度に影響するため、非常に重要です。
メジャーや水平器を使って、ミリ単位の精度で作業を行います。
型枠の組立て作業では、木材やアルミ型枠を使って枠を作ります。
電動ノコギリで材料を切断し、釘打ち機やハンマーで固定していきます。
型枠同士の接合部分の処理は特に重要で、コンクリートが漏れないよう隙間なく固定する技術が求められます。
型枠大工の安全管理
建設現場は常に安全リスクと隣り合わせです。
特に型枠大工の作業は高所での作業や重量物の取り扱いが多いため、安全管理は最重要事項となります。
現場では以下のような安全対策が徹底されています。
まず、個人保護具の着用は絶対条件です。
ヘルメット、安全靴、手袋、必要に応じて安全帯(墜落制止用器具)などを常に着用します。
高所作業が多い型枠大工にとって、墜落防止対策は特に重要です。
- 朝礼での安全確認と危険予知活動(KY活動)
- 適切な個人保護具の着用(ヘルメット、安全靴、手袋など)
- 高所作業時の墜落防止対策(安全帯の使用、足場の点検)
- 電動工具の正しい使用方法と定期点検
- 重量物の安全な取り扱い方法(腰痛防止)
- 熱中症対策(夏季)と防寒対策(冬季)
また、作業前の「危険予知活動(KY活動)」も重要です。
その日の作業で起こりうる危険を事前に予測し、対策を立てておくことで事故を未然に防ぎます。
日々の小さな安全確認の積み重ねが、重大事故防止につながるのです。
型枠大工のキャリアと収入
型枠大工の給与水準やキャリアパスについて解説します。
建設業界の中でも、型枠大工は高い技術を持つ職人として評価される職種です。
未経験からでも始められるキャリアプランや、経験を積むことでどのように収入が変化していくのかを見ていきましょう。
年収の目安と経験による変化
型枠大工の収入は、経験年数やスキルレベル、所属する会社の規模、地域などによって大きく異なります。
一般的な目安として、2024年時点での型枠大工の年収レンジを紹介します。
未経験者からベテラン職人まで、どのように収入が変化していくかを見てみましょう。
未経験者や見習いの段階では、年収300〜400万円程度が一般的です。
この段階では基本的な技術を学びながら、先輩の補助的な役割を担うことが多いです。
経験を積んで一人前と認められるようになると、年収は400〜600万円程度に上昇します。
経験レベル | 年収目安(2024年現在) | |
---|---|---|
見習い期間 | 未経験〜3年未満 | 300〜400万円 |
一人前 | 3〜10年程度 | 400〜600万円 |
職長クラス | 10年以上 | 600〜800万円 |
親方・経営者 | 独立後 | 800万円〜 |
10年以上のキャリアを積んで職長(現場のリーダー)クラスになると、年収600〜800万円程度に達することも珍しくありません。
さらに独立して自分の会社を持つ「親方」になると、年収800万円以上も十分可能です。
特に型枠工事の技術力が高く評価され、大規模プロジェクトを多く受注できる親方は、年収1,000万円を超えるケースもあります。
キャリアパスと将来性
型枠大工としてのキャリアパスには、いくつかの選択肢があります。
技術を磨いてスペシャリストとして活躍する道、管理職として部下を指導する道、独立して自分の会社を持つ道などです。
それぞれのキャリアパスについて見ていきましょう。
最もオーソドックスなキャリアパスは、見習いから始めて徐々に技術を身につけ、一人前の型枠大工になることです。
さらに経験を積むと、職長として現場を取り仕切る立場になります。
職長は技術面だけでなく、作業の段取りや人員配置など、マネジメント能力も求められます。
- 見習い(アシスタント)として基礎を学ぶ
- 一人前の型枠大工として技術を磨く
- 職長として現場をまとめる立場になる
- 独立して自分の型枠工事会社を経営する
- 専門技術を活かして関連分野へ転身(施工管理など)
キャリアの集大成として、独立して自分の型枠工事会社を立ち上げる道もあります。
「親方」と呼ばれるこのポジションでは、営業活動や経営管理なども必要になりますが、自分の裁量で仕事を進められる自由度と、それに見合った収入が期待できます。
未経験から型枠大工になるまで
型枠大工は、未経験者でも挑戦できる職種です。
建設業界が人手不足に悩む中、意欲のある人材を積極的に受け入れる傾向にあります。
未経験から型枠大工になるまでの一般的なステップを紹介します。
- 型枠工事会社への直接応募(未経験可の求人を探す)
- 建設業の職業訓練校で基礎を学んでから就職
- 建設業界全般の求人に応募し、その後型枠工事部門へ異動
- 知人や親族の紹介で型枠大工の現場に入る
就職後は、見習い期間として先輩の補助的な作業から始まります。
道具の使い方や材料の取り扱い方、基本的な作業の流れなどを実地で学びます。
見習い期間は通常1〜3年程度で、その間に徐々に任される仕事の範囲が広がっていきます。
型枠大工に必要なスキルと資格
型枠大工として活躍するために必要なスキルや資格について解説します。
技術的な能力だけでなく、体力や協調性なども重要な要素です。
また、キャリアアップに役立つ資格についても紹介し、この職業の魅力と課題について考えていきましょう。
技術的スキルと身体能力
型枠大工に必要なスキルは、技術面と身体面の両方に及びます。
まず技術面では、図面を読み解く力や寸法を正確に測る能力が基本となります。
道具の使い方や材料の特性を理解し、適切に加工・組立てする技術も必須です。
身体面では、一定の体力と筋力が求められます。
型枠材料は重量があるものが多く、それらを持ち運び、組み立てるには体力が必要です。
また、細かい作業も多いため、器用さも重要なスキルと言えるでしょう。
- 図面読解力:設計図を正確に理解する能力
- 測量技術:正確に寸法を測り、墨出しする能力
- 道具の使用技術:各種工具を的確に使いこなす能力
- 体力・筋力:重い材料を扱うための身体能力
- バランス感覚:高所作業を安全に行うための感覚
- 空間把握力:立体的な構造を頭の中でイメージする能力
これらの技術やスキルは、実際の現場で経験を積むことで徐々に身についていきます。
特に重要なのは、正確さと安全性を常に意識する姿勢です。
1ミリの誤差も許されない場面もあり、集中力と精密さが求められる職業と言えるでしょう。
役立つ資格と取得方法
型枠大工として働く上で、法律上必須の資格はありませんが、キャリアアップや収入アップにつながる資格がいくつかあります。
これらの資格を取得することで、自分の市場価値を高めることができます。
主な資格とその概要を紹介します。
まず、建設現場で働く上で基本となる「足場の組立て等特別教育」や「玉掛け技能講習」などの安全関連の資格があります。
これらは短期間の講習で取得でき、現場での作業範囲を広げるのに役立ちます。
また、高所作業車運転技能講習も型枠大工にとっては有用です。
資格名 | 取得難易度・期間 | メリット | |
---|---|---|---|
基本資格 | 足場の組立て等特別教育 | 易・1〜2日 | 高さ5m未満の足場作業が可能 |
基本資格 | 玉掛け技能講習 | 中・3〜5日 | クレーン作業の補助が可能 |
専門資格 | 型枠支保工の組立て作業主任者 | 中・5日程度 | 現場での責任者になれる |
上級資格 | 型枠施工技能士 | 難・実務経験必要 | 技能を公的に証明できる |
より専門的な資格としては、「型枠支保工の組立て等作業主任者」があります。
これは高さ2m以上の型枠支保工の組立作業を監督する立場になるための資格で、職長クラスになると必要になることが多いです。
さらに、国家資格である「型枠施工技能士」は、型枠大工としての技能を客観的に証明する資格で、1級・2級があります。
型枠大工の仕事の魅力と課題
型枠大工という仕事には、やりがいや魅力がある一方で、課題や厳しい面もあります。
この職業を検討する際には、両面を理解しておくことが大切です。
まずは型枠大工の仕事の魅力について見ていきましょう。
型枠大工の最大の魅力は、自分の手で建物という形のある成果物を作り上げる達成感です。
自分が携わった建物が完成し、何十年も残っていくことへの誇りは、他の職業では得られない特別なものです。
また、技術を身につければ高収入も期待でき、独立の道も開かれています。
- 魅力:形に残る仕事への誇り、技術向上に伴う収入アップ、独立の可能性
- 課題:体力的な負担、天候に左右される作業環境、現場によって変わる労働条件
一方、課題としては、身体的な負担の大きさが挙げられます。
重い材料を扱い、時には不安定な姿勢での作業も必要なため、腰痛などの職業病リスクがあります。
また、屋外作業が多いため、天候に左右されることも課題です。
近年は建設業界全体で働き方改革が進み、休暇の取得やワークライフバランスの改善が図られています。
また、機械化や新しい工法の導入により、身体的負担を軽減する取り組みも進んでいます。
これらの変化により、型枠大工という職業の魅力がさらに高まることが期待されています。
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まとめ
型枠大工は建設業界において、建物の骨格を形作る重要な役割を担う専門職です。
コンクリート構造物の形状や品質を左右する責任ある仕事であり、技術と経験が高く評価される職種と言えるでしょう。
仕事内容としては、設計図面の読解から始まり、墨出し、型枠の組立て、調整、コンクリート打設の立会い、そして脱型までの一連の工程を担当します。
これらの作業には正確さと安全性が求められ、専門的な道具や技術が必要となります。
収入面では、経験を積むにつれて年収が上がっていく傾向があり、職長クラスになれば600〜800万円、独立して親方になれば800万円以上の年収も可能です。
未経験からでも始められる職種であり、意欲と体力があれば挑戦の余地は十分にあります。
必要なスキルとしては、図面読解力や測量技術、道具の使用技術などの技術面に加え、体力や空間把握力なども重要です。
また、キャリアアップには様々な資格取得が有効で、特に型枠支保工の組立て等作業主任者や型枠施工技能士などの資格は価値があります。
型枠大工という職業には、形に残る仕事への誇りや技術を活かした高収入、独立の可能性という魅力がある一方で、体力的な負担や天候に左右される作業環境といった課題もあります。
これらを総合的に判断した上で、自分に合った職業選択をしてみてください。