建設業界では、現場を適切に管理できる技術者の存在が不可欠です。
中でも施工管理技士は、工事の品質や安全性、工期の遵守などを担う重要な役割を担っています。
施工管理技士には実は7種類もの資格があり、それぞれ専門分野が異なります。
この記事では、施工管理技士の各資格の特徴や違い、さらには主任技術者と監理技術者の違いなど、建設業界でのキャリアアップを考える方に役立つ情報をご紹介します。
あなたの建設キャリアを形成する上での参考にしていただければ幸いです。
施工管理の役割と重要性
施工管理は建設プロジェクトの成功を左右する重要な職種です。
建物やインフラを計画通りに、安全かつ高品質に完成させるための要となります。
ここでは施工管理の基本的な役割と、その担い手である施工管理技士について解説します。
施工管理技士とは何か
施工管理技士とは、建設工事現場において工程・品質・安全・原価などを総合的に管理する国家資格を持った技術者のことです。
建設業法に基づき、一定規模以上の工事現場には必ず配置が義務付けられています。
施工管理技士は「現場の司令塔」とも呼ばれ、プロジェクト全体を統括する重要な役割を担っています。
施工管理技士には1級と2級があり、扱える工事の規模や責任範囲が異なります。
1級施工管理技士は、より大規模な工事の管理が可能となり、監理技術者として現場に配置されることができます。
2級施工管理技士は比較的小規模な工事の主任技術者として活躍できる資格です。
建設現場における施工管理の必要性
建設プロジェクトは多くの業者が関わる複雑な作業の集合体です。
工程通りに進まなければ、納期の遅れやコスト増大につながります。
また、品質管理が不十分だと、建物の安全性や耐久性に問題が生じる恐れがあります。
施工管理技士は、これらの問題を未然に防ぐため、以下の「4大管理」を行います。
工程管理、品質管理、安全管理、原価管理です。
これらの管理を適切に行うことで、計画通りに工事を進め、高品質な建造物を安全かつ予算内で完成させることができます。
- 工程管理:工事が計画通りに進むよう日程を調整
- 品質管理:建物の品質を確保するための検査・確認
- 安全管理:事故を防止し作業員の安全を確保
- 原価管理:コストを適切に管理し予算内で工事を完了
施工管理技士に求められるスキル
施工管理技士には、技術的な知識だけでなく、多様なスキルが求められます。
まず、設計図書を正確に理解し、それを現場作業に落とし込む能力が必要です。
また、現場では様々な職種の人々と協働するため、高いコミュニケーション能力も欠かせません。
問題解決能力も重要なスキルです。
建設現場では予期せぬトラブルが発生することも多く、その場で適切な判断を下す必要があります。
さらに、法令や規制に関する知識も必須であり、コンプライアンスを遵守した工事進行が求められます。
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施工管理技士の資格7種類とその特徴
施工管理技士の資格は、専門分野によって全部で以下の7種類に分かれています。
それぞれの資格には独自の役割と特徴があり、建設現場の様々なニーズに対応しています。
ここでは各資格の特徴について詳しく解説します。
- 建設機械施工管理技士
- 建築施工管理技士
- 土木施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 造園施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
建設機械施工管理技士
建設機械施工管理技士は、建設機械を使用する工事の施工管理を行う国家資格です。
ブルドーザーやロードローラーなどの建設機械の取り扱いに関する専門知識が求められます。
主に土木工事の現場で活躍し、土地の造成や道路工事などに携わることが多いのが特徴です。
この資格を取得すると、建設機械を使用する工事現場の主任技術者として配置されることが可能になります。
近年では、ICT(情報通信技術)を活用した「i-Construction」の推進により、建設機械の自動制御や3D設計データの活用など、より高度な知識も求められるようになっています。
建設業の中でも特に機械操作に関心がある方に向いている資格といえるでしょう。
建築・土木施工管理技士
建築施工管理技士と土木施工管理技士は、施工管理技士の中でも特に需要の高い資格です。
建築施工管理技士は、建築物の建設工事全体の進行を管理します。
工程・日程の調整や関係業者の取りまとめが主な業務となり、高いコミュニケーション能力が求められます。
一方、土木施工管理技士は、道路、橋梁、ダム、トンネルなどの土木工事の計画と実行管理を担当します。
特に公共工事では、主任技術者・監理技術者として土木施工管理技士の配置が義務づけられている現場も多く、需要の高い資格となっています。
両資格とも、建設業界の中核を担う重要な資格として位置づけられています。
建築施工管理技士 | 土木施工管理技士 | |
---|---|---|
対象工事 | 建築物の建設工事 | 道路、橋梁、ダム等の土木工事 |
主な業務 | 工程・日程調整、業者の取りまとめ | 土木工事の計画・実行管理 |
必要スキル | 高いコミュニケーション能力 | 土木工学の知識、外部環境への対応力 |
設備系施工管理技士
設備系の施工管理技士には、管工事施工管理技士、電気工事施工管理技士、造園施工管理技士、そして2019年に新設された電気通信工事施工管理技士があります。
これらは建物やインフラの機能性を支える重要な役割を担っています。
各資格の特徴について見ていきましょう。
管工事施工管理技士は、ダクト、冷暖房、下水、浄化槽などの配管設備工事の管理を担当します。
建物の快適性や衛生面を支える重要な役割があります。
電気工事施工管理技士は、建物や施設の電気設備工事を管理し、電気工学や関連法令の知識が必要とされます。
造園施工管理技士は、公園や庭園、屋上緑化などの緑化工事を管理する資格です。
合格率が低く、施工管理技士の中でも最難関資格の一つとされています。
1級を取得すると自治体発注の業務に対応できるようになります。
電気通信工事施工管理技士は、約30年ぶりに2019年に新設された国家資格です。
携帯電話やインターネットなどの通信設備工事を対象としており、社会インフラの需要増加により注目されている分野です。
ICT技術の進化に伴い、今後さらに重要性が高まると予想される新しい資格といえるでしょう。
- 管工事施工管理技士:配管設備工事の管理
- 電気工事施工管理技士:電気設備工事の管理
- 造園施工管理技士:緑化工事の管理(最難関クラス)
- 電気通信工事施工管理技士:通信設備工事の管理(2019年新設)
施工管理技士の位置づけと役割
施工管理技士の資格を取得すると、主任技術者や監理技術者として現場に配置されることができます。
この二つの役割には明確な違いがあり、資格取得者のキャリアパスにも大きく影響します。
ここでは、それぞれの違いや資格取得のメリット、試験制度について解説します。
主任技術者と監理技術者の違い
建設現場において、主任技術者と監理技術者はともに重要な役割を果たしますが、その位置づけや責任範囲には明確な違いがあります。
主任技術者は、すべての工事現場に必ず一人以上配置することが法律で義務付けられています。
2級施工管理技士の資格があれば主任技術者になることができ、基本的に実務経験の要件は不要です。
一方、監理技術者は中規模から大規模工事において配置が必要となります。
1級施工管理技士の資格を取得した後、さらに監理技術者講習を受講する必要があります。
また、一定の実務経験も求められますが、特別認定を受けることで要件が緩和される場合もあります。
主任技術者 | 監理技術者 | |
---|---|---|
資格要件 | 2級施工管理技士で可 | 1級取得後に監理技術者講習が必要 |
実務要件 | 基本的に不要 | 実務経験必要(特別認定制度あり) |
工事規模 | 小~中規模 | 中~大規模工事に必要 |
配置義務 | すべての工事現場に必須 | 金額の大きい現場では併せて配置義務あり |
施工管理技士資格取得のメリット
施工管理技士の資格を取得することには、多くのメリットがあります。
まず、業務の幅が大きく広がります。
各種の主任技術者や監理技術者として様々な現場で活躍することが可能になり、キャリアの選択肢が増えます。
転職市場においても優位性があります。
建設業界では施工管理技士の資格保持者は即戦力として高く評価されます。
特に1級施工管理技士は、建設業界での高い専門性を証明するものとして認識されており、キャリアアップや年収アップにつながることが多いです。
また、国家資格を保有していることで社会的信頼も高まります。
顧客や関係者からの信頼を得やすくなり、仕事をスムーズに進めることができるようになります。
施工管理技士の資格は、建設業界でのキャリア形成において非常に重要な要素となっているのです。
資格取得の試験制度と特徴
施工管理技士の試験制度には、いくつかの特徴があります。
まず、合格率は約20%程度と比較的難関の資格に分類されます。
しかし、試験内容は実務経験に基づく出題が多いため、実際に建設業界で働きながら学習することで合格の可能性が高まります。
施工管理技士の試験は、絶対評価方式を採用しています。
これは一定の基準点(例えば70点)以上を取れば、受験者全員が合格できるシステムです。
司法書士や宅建などの他の資格試験で採用されている相対評価(上位○%のみ合格)とは異なり、自分の実力次第で合格できる点が特徴です。
試験は学科試験と実地試験の2段階に分かれており、どちらも合格する必要があります。
ただし、一部の試験では学科試験のみ合格した場合、翌年は学科試験が免除される制度もあります。
このように、働きながらでも段階的に取得を目指せる制度設計になっています。
- 合格率:約20%(難関資格に分類)
- 評価方法:絶対評価方式(基準点以上で全員合格可能)
- 試験構成:学科試験と実地試験の2段階
- 特徴:実務経験に基づく出題が多く、働きながらでも合格可能
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まとめ
建設業界において施工管理技士は不可欠な存在であり、全7種類の資格それぞれが専門分野で重要な役割を担っています。
建設機械施工管理技士、建築施工管理技士、土木施工管理技士、管工事施工管理技士、電気工事施工管理技士、造園施工管理技士、そして2019年に新設された電気通信工事施工管理技士まで、各資格は建設プロジェクトの様々な側面をカバーしています。
資格を取得することで、主任技術者や監理技術者として現場に配置される道が開け、キャリアの幅が大きく広がります。
特に1級資格の取得は、転職市場での優位性や収入アップにもつながる重要なステップとなるでしょう。
施工管理技士の試験は難関ではありますが、実務経験に基づく出題が多く、働きながら段階的に取得を目指すことが可能です。
あなたの興味や適性に合った施工管理技士の資格を選び、建設業界でのキャリアアップに役立ててください。