「採用が難しい」と感じている人事担当者や採用責任者は少なくありません。
少子高齢化による労働人口の減少や求職者の価値観の多様化など、採用環境は年々厳しさを増しています。特に優秀な人材の確保は企業の成長と存続に直結する重要課題となっており、従来の採用手法では思うような成果が得られないケースが増えています。
本記事では、なぜ現代の採用活動が難しくなっているのか、その背景と原因を掘り下げるとともに、採用難を乗り切るための具体的な対策や戦略を詳しく解説します。
人材獲得競争が激化する中、どのように自社の魅力を伝え、適切な人材とマッチングを図るべきか、最新のトレンドや効果的なアプローチ方法についても紹介します。
採用活動に悩む人事担当者の方々に、現状を打開するためのヒントや具体的な施策のアイデアを提供し、より効果的で持続可能な採用体制の構築にお役立ていただければ幸いです。
採用活動が難しくなっている現状と原因
採用活動の難しさは、単なる一時的な現象ではなく、社会構造の変化や経済環境の変化に根ざした本質的な課題となっています。
ここでは、なぜ現代の企業が採用に苦戦しているのか、その背景にある主要な要因を詳しく見ていきましょう。
人材不足と売り手市場の進行
日本の労働市場は、少子高齢化の影響を強く受けており、生産年齢人口の減少が続いています。
総務省の統計によれば、2023年の労働力人口は約6,800万人で、今後10年間でさらに400万人以上減少すると予測されています。
この人口動態の変化により、企業間の人材獲得競争は年々激化しており、特に専門性の高い職種や技術職においては深刻な人材不足が生じています。
また、有効求人倍率は業種によって差はあるものの、全体としては1倍を超える水準が続いており、求職者が仕事を選べる「売り手市場」の状況が常態化しています。
特に、IT・デジタル領域やヘルスケア、高度な専門知識を要する職種では、有効求人倍率が3倍を超える状況も珍しくありません。
このような環境下では、求職者は複数の内定を得られることも多く、企業側は選考通過者の辞退リスクも高まっています。
採用コストの高騰と投資対効果の低下
採用難の深刻化に伴い、人材確保のためのコストは年々上昇しています。
採用広告費の高騰はもちろん、選考プロセスの長期化や採用担当者の工数増加、さらには内定辞退対策など、直接・間接の採用コストは企業にとって大きな負担となっています。
リクルートワークス研究所の調査によれば、新卒採用における一人あたりの採用コストは平均で約100万円、中途採用ではさらに高額になるケースも珍しくありません。
問題なのは、コストの上昇に比例して採用の成功率が向上しているわけではないことです。
多くの企業が採用予算を増額しても、応募者数の減少や内定辞退率の上昇により、結果として採用目標を達成できないというジレンマに陥っています。
採用広告への投資対効果(ROI)は低下傾向にあり、従来の手法だけでは効率的な人材獲得が困難になっています。
求職者の就業価値観の多様化
現代の求職者、特に若年層を中心に、就業に対する価値観は大きく変化しています。
かつての「安定した大企業に就職し、長く勤め上げる」という単一的なキャリア観は薄れ、働き方やライフスタイル、自己実現など、多様な価値基準で就職先を選ぶ傾向が強まっています。
株式会社マイナビの「2023年度新卒採用動向調査」によれば、就職先選択の重視点として「企業の安定性」に加え、
- 「ワークライフバランス」
- 「職場の雰囲気」
- 「成長機会」
- 「社会的意義」
などが上位に挙げられています。
特に注目すべきは、Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)の就業価値観です。
彼らはデジタルネイティブとして育ち、情報収集能力が高く、企業の実態や評判を様々なチャネルから簡単に調査できます。
求人広告やリクルーターの説明だけでなく、口コミサイトやSNSでの評判、実際の従業員の声など、多角的な情報をもとに就職先を選ぶ傾向が強まっています。
このような価値観の多様化は、企業側にとって採用メッセージの複雑化をもたらし、すべての求職者に訴求する採用活動が困難になっているのです。
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採用難の具体的な課題と対応策
採用が難しくなっている原因を理解したところで、企業が直面している具体的な課題と、それに対する効果的な対応策を見ていきましょう。
現場レベルでの実践的なアプローチを中心に解説します。
人材獲得競争の激化への対策
優秀な人材の獲得競争は年々激しさを増しており、特に専門性の高い職種や成長産業では、企業間での人材の奪い合いが常態化しています。
この競争に打ち勝つためには、単に待遇面での競争だけでなく、自社ならではの魅力を明確に打ち出すことが重要です。
具体的には、キャリア成長の機会、働きやすさ、企業理念や社会的意義など、金銭的報酬以外の価値提案(バリュープロポジション)を強化することが効果的です。
また、採用プロセスのスピードアップも重要な競争力となります。
優秀な候補者は市場に長くとどまらないため、選考から内定までのプロセスを効率化し、スピーディーな意思決定を行うことで内定承諾率を高めることができます。
応募から内定までの期間を2週間以内に短縮した企業では、内定承諾率が平均20%向上したという調査結果もあります。
さらに、採用競争力を高めるには、自社の強みを活かした独自の採用チャネルを開拓することも効果的です。
例えば、業界イベントやコミュニティへの参加、社員紹介プログラムの強化、インターンシップや産学連携など、汎用的な求人サイトだけに依存しない多角的なアプローチが求められます。
ミスマッチによる早期離職問題の解決法
採用難の時代において、せっかく採用した人材が早期に離職してしまうことは大きな損失です。
厚生労働省の調査によれば、新卒入社後3年以内の離職率は約3割に達しており、この数字は採用担当者にとって看過できない課題となっています。
早期離職の主な原因の一つが、入社前の期待と実際の仕事内容や職場環境とのギャップ、すなわち「ミスマッチ」です。
このミスマッチを減らすためには、採用活動における情報開示の質と量を高めることが重要です。
企業の良い面だけでなく、仕事の厳しさや課題も含めた「リアルな情報」を伝えることで、入社後のギャップを減らすことができます。
このアプローチは「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP)」と呼ばれ、短期的には応募者が減る可能性がありますが、長期的には適性の高い人材の確保と定着率向上につながります。
具体的な施策としては、職場見学や1日体験、社員との交流機会の提供、詳細な業務説明動画の作成などが有効です。
また、選考プロセスにおいても、実際の業務に近い課題を出すケーススタディやアセスメントを取り入れることで、双方向の適性確認が可能になります。
実際に、RJPを採用プロセスに取り入れた企業では、入社後1年以内の離職率が平均40%低下したというデータもあります。
採用力の強化と体制構築
採用難の時代に勝ち抜くためには、採用業務を「人事部の片手間の仕事」から「企業の成長を支える戦略的機能」へと位置づけを変える必要があります。
そのためには、採用活動を担う人材の専門性向上と、組織全体での採用への取り組みが不可欠です。
採用担当者には、労働市場の動向分析、マーケティング的思考、データ分析能力など、従来の「面接官」の枠を超えたスキルが求められるようになっています。
組織体制面では、採用専任チームの設置や、現場マネージャーの採用プロセスへの積極的な関与を促進することが効果的です。
特に、応募者と直接接点を持つ面接官の質は、候補者の入社意欲に大きく影響します。
面接スキルの向上や、企業の魅力を適切に伝えるトレーニングを実施することで、選考通過者の内定承諾率を高めることができます。
また、採用活動は人事部門だけでなく、経営層を含めた全社的な取り組みとして位置づけることも重要です。
経営者やマネージャーが採用の重要性を理解し、自らも採用活動に参画することで、組織全体の採用力が向上します。
例えば、役員面接を形式的なものではなく、候補者に会社のビジョンを伝え、入社意欲を高める機会として活用している企業では、内定承諾率が30%以上高いというデータもあります。
採用難時代の効果的な採用戦略
採用が難しくなっている現代において、従来型の「求人広告を出して応募を待つ」という受動的なアプローチだけでは、十分な成果を上げることは困難です。
ここでは、採用難を乗り切るための戦略的なアプローチについて、実践的な視点から解説します。
採用ブランディングの構築と強化
採用ブランディングとは、企業が雇用主として持つ独自の魅力や価値を明確にし、一貫して発信していく取り組みです。
強力な採用ブランドを持つ企業は、応募者数の増加だけでなく、採用コストの削減や内定承諾率の向上など、様々な面で優位性を発揮できます。
リンクトインの調査によれば、強い採用ブランドを持つ企業は、採用コストが平均50%低く、離職率も28%低いという結果も出ています。
採用ブランディングの第一歩は、自社の「従業員価値提案(EVP: Employee Value Proposition)」を明確にすることです。
EVPとは、従業員が会社で働くことで得られる総合的な価値のことで、給与などの報酬、成長機会、働き方、企業文化、社会的意義などの要素から構成されます。
自社の強みや独自性を反映したEVPを定義することで、ターゲット人材に対して効果的なメッセージを発信することができます。
次に重要なのは、定義したEVPを様々なチャネルを通じて一貫性を持って発信することです。
自社のキャリアサイト、SNS、採用イベント、社員の口コミなど、あらゆる接点において整合性のあるメッセージを伝えることが、信頼性の高い採用ブランドの構築につながります。
特に、実際の従業員の声や経験談を活用したストーリーテリングは、企業の文化や価値観を生き生きと伝える効果的な手法です。
採用チャネルの最適化と多様化
採用難の時代においては、従来の求人メディアだけに依存するのではなく、複数の採用チャネルを効果的に組み合わせることが重要です。
各チャネルの特性を理解し、採用ターゲットに合わせた最適な組み合わせを検討しましょう。
まず、主要な採用チャネルとその特性について整理してみましょう。
主な特徴 | 効果的な活用法 | |
---|---|---|
求人メディア | 広い範囲に訴求可能だが、競合も多い | ターゲットを絞った専門サイトの活用 |
社員紹介 | 質の高い候補者が集まりやすい | インセンティブ制度の充実と社内浸透 |
SNS採用 | 企業文化の発信に効果的 | プラットフォーム特性に合わせたコンテンツ |
ダイレクトリクルーティング | 能動的にターゲット人材にアプローチ | パーソナライズされたメッセージ設計 |
イベント・コミュニティ | 直接対話による深い関係構築が可能 | 業界イベントやミートアップへの参加 |
特に注目すべきは、近年効果を上げている「社員紹介プログラム」です。
人材紹介会社ジョブスプリングの調査によれば、社員紹介による採用は他のチャネルに比べて定着率が23%高く、採用コストも30%以上削減できるというデータがあります。
紹介制度を成功させるには、単に報奨金を設定するだけでなく、定期的な制度の周知や紹介しやすい仕組みづくり、紹介者への適切なフィードバックなど、社内の仕組みづくりが重要です。
また、ダイレクトリクルーティング(能動的な候補者へのアプローチ)も、特に専門職や経験者採用において効果を発揮します。
LinkedInやWantedlyなどのプロフェッショナルネットワークを活用し、ターゲット人材に直接アプローチする手法は、採用難の時代において重要性を増しています。
この手法を効果的に実践するには、候補者の興味・関心を引く魅力的なメッセージの設計や、継続的な関係構築が鍵となります。
データ分析に基づく採用活動の効率化
採用難時代において成果を上げるためには、感覚や経験則だけに頼るのではなく、データに基づいた採用活動の設計と改善が不可欠です。
採用データの収集・分析・活用により、限られたリソースを最大限効果的に配分することができます。
まず重要なのは、自社の採用活動に関する主要指標(KPI)を設定し、継続的に測定することです。
採用活動で測定すべき主な指標としては、以下のようなものが挙げられます。
例えば、応募者数や応募者の質、各選考段階の通過率、内定承諾率、採用コスト(Cost Per Hire)、採用リードタイム(募集開始から入社までの期間)などです。
これらの指標を採用チャネルや職種ごとに細かく分析することで、効果の高いチャネルや、改善が必要なプロセスを特定することができます。
データ分析の具体的な活用例としては、以下のようなアプローチが効果的です。
例えば、採用チャネルごとの費用対効果(ROI)を算出し、効率の悪いチャネルの予算を削減または改善することが挙げられます。
また、選考プロセスの各段階における離脱率(ドロップアウト率)を分析し、応募者離れが発生しているボトルネックを特定して改善することも重要です。
さらに、入社後のパフォーマンスデータと採用時の評価を紐づけて分析することで、将来的な採用基準の最適化にも役立てることができます。
例えば、「面接での高評価が必ずしも入社後の高いパフォーマンスに結びついていない」といった発見は、選考基準の見直しにつながります。
このようなデータ駆動型の採用活動を実践している企業では、採用成功率が平均40%向上し、採用コストも25%削減したという調査結果もあります。
データ分析のハードルを下げるためには、採用管理システム(ATS)の導入も効果的です。
ATSを活用することで、応募者情報の一元管理やプロセスの効率化だけでなく、各種データの収集・分析も容易になります。
規模の小さい企業であっても、ExcelやGoogleスプレッドシートを活用した簡易的なデータ追跡から始めることで、データ駆動型の採用活動への第一歩を踏み出すことができます。
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まとめ
本記事では、現代の企業が直面している「採用の難しさ」について、その背景から具体的な対策まで幅広く解説してきました。
少子高齢化による人材不足、求職者の価値観の多様化、採用コストの高騰など、採用活動を取り巻く環境は確実に厳しさを増しています。
しかし、このような採用難の時代においても、戦略的なアプローチによって成果を上げている企業は存在します。
採用ブランディングの強化、採用チャネルの最適化、データに基づく採用活動の効率化などの施策を総合的に展開することで、採用課題を乗り越えることが可能です。
特に重要なのは、採用活動を「人材を集める」という短期的な視点ではなく、「企業の持続的成長を支える人材基盤を構築する」という長期的・戦略的な視点で捉えることです。
また、採用難時代においては、単に「人を増やす」ことだけでなく、既存社員の定着と育成にも同時に注力することが、総合的な人材戦略として不可欠です。
採用、育成、定着の三位一体の取り組みによって、企業の人材基盤を強化していくことが求められています。
企業の成長と存続に直結する採用活動。この記事で紹介した考え方や施策を参考に、自社の採用戦略を見直し、厳しい人材獲得競争を勝ち抜くための一助としていただければ幸いです。
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